動き出した弁理士会(下)新業務の探索を開始

生かせ!知財ビジネス

 弁理士の収益源となる新業務とは何か-。日本弁理士会は新設した「知的財産経営センター」では、これまで開発してきた知財価値評価や知財コンサルティング、知的資産経営報告書作成などの弁理士周辺業務分野を深耕する。特に、利用者ニーズと弁理士の10年先の姿を見据え、弁理士が関与を深める可能性がある新規業務分野を探索し、ビジネスモデルのあり方や普及、人材育成方法などについて研究していく。

 背景の一つには「特許事務所間のサービス価格競争が激化した」(都内弁理士)ことがある。国内特許出願件数が減少を続ける半面、登録弁理士数は増え続け、弁理士の専権業務である特許出願・権利化業務の1人当たり仕事量は今や10年前の半分を割った。収益構造を見直し、経営基盤を改善することは重要課題となっている。

 主な弁理士周辺業務は、3つの事業本部で分担する。注目の新規業務分野は知的資産活用事業本部が受け持つ。対象は現在検討中だが、「知財金融」と「弁理士周辺の知財関連ビジネス」の2分野が候補に挙がっている。

 知財金融では、銀行・信金の融資機関やベンチャーキャピタル・ファンドなど投資機関の業務、企業の海外展開時リスク低減策として損保会社が提供を始めた知財保険業務などを対象とするとみられる。

 弁理士周辺の知財関連ビジネスでは、「知財翻訳」「年金管理」「知財流通」などが候補。知財翻訳は企業が海外展開をする際に特許明細書や知財関連契約書類を外国語に訳す。年金は特許権者が権利維持のために各国特許庁へ納める特許料のことで、年金管理は企業の依頼で特許料の納付・管理を代行する業務だ。知財流通は特許や技術などの価値を評価して企業間や大学・企業間で売買やライセンスを成立させる仲介業務である。

 関係者は「新センター開設に伴い、弁理士の専門知識を生かしつつ企業や社会に必要とされる新規業務とは何か、どういうビジネスモデルなら成立するかを研究し、実践へとつなげていきたい」と話している。

 新業務分野はグローバル、ネットワーク時代の国民・企業などのニーズに対応してこそ成立する。弁理士に求められる新たな知財の専門家像とは何か、知的財産経営センターの今後の活動が注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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 ■日本弁理士会知的財産経営センターの主な弁理士周辺業務分掌

 事業本部

 ・知財価値評価(事業部/概要)

 第2/価値評価の基準やマニュアルの作成など

 第3/価値評価業務での情報収集や啓発活動など

 第4/価値評価業務に関する研修の企画、実施など

 ・知財経営コンサル(事業部/概要)

 第5/知財経営コンサルに関する手法の研究など

 第6/知財経営コンサルに関する研修の開発など

 ・知的資産活用(事業部/概要)

 第7/知的資産経営・報告書の調査、研究など

 第8/新規知財ビジネスの探索、研究など