“情報財”制度、日本優位の議論を
生かせ!知財ビジネス政府・知的財産戦略本部が「新たな情報財検討委員会」の報告書を3月に公表して以来、企業の知財部門からは「難しい課題によく挑戦している」(大手電機)、「今の知財部門で理解、対応が可能だろうか」(大手機械)などさまざまな反響が聞かれる。委員会は、第4次産業革命時代にデータなどの情報財を利活用することを目的に知財関連制度の観点から検討を試みたが、反響の中には“国益”という全く別の見方による意見もある。
国益優先の意見を集約すると「そもそも今後、国力を左右する制度を国内外衆目の中で検討すべきか」というものだ。面白いことに同様の声は官民双方にあった。
委員会の課題は、従来の知財関連法や不正競争防止法の中に、新概念の“情報財”をいかに組み込むかだ。国際的にも確定されていない新領域で、企業や産業の今後の競争力や収益力を左右する可能性もあり、制度論と具体的な企業・産業政策が一体になった議論が必要になるという。
例えばIoT(モノのインターネット)社会を考えるとき、重要な要素となるAI(人工知能)技術は欧米勢が先行しているとされる。AIには膨大なデータが流通するため、生データを情報財として価値あるデータに仕立てることで、保有者の権利を守り、保有者自身が活用できるようにするニーズも生じる。そこに、どういう制度が最適かという議論が必要になるわけだ。
一方、こうした膨大なデータが流通する仕組みを、超高性能なハードウエアがひっくり返す可能性があるという話もある。実はこのハードは、外資が傘下に収めようと狙う瀕死(ひんし)の日本企業が強い分野である。
外資が目を付けるほどの強みをもつ企業であれば、独自の戦略モデルで世界と戦える可能性も出てくる。当然、国や企業が集めるべき知財の質も変わってくる。
わが国の、潜在化している技術や知財の優位性を具体的に挙げながら検討することで、日本企業が勝利できる知財関連制度を設計することもできるだろう。だが、公式のオープンな場で、日本企業や日本産業を勝たせるという、真にシリアスな戦略議論ができるだろうか。だから国益を重視する面々は、オープンな議論の場に加えて、クローズドな場も必要になるという主張を展開するのである。(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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