ALS治療薬の有力候補、患者由来のiPS使い発見 京都大 白血病薬が有効

 
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療標的分子経路を同定した論文について説明する井上治久教授(左)=24日、京都市左京区(寺口純平撮影)

 全身の筋肉が衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の治療薬開発につながる有力な候補物質を、患者由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って見つけたと京都大iPS細胞研究所などのチームが発表した。24日付の米科学誌電子版に掲載された。

 同研究所の井上治久教授(神経内科学)は「今回発見した物質を中心に創薬が展開できる。10年以内に患者の手元に届くことを目指したい」と話している。

 チームはALS患者の皮膚や血液からiPS細胞を作製。これを使って神経細胞を作ったところ、異常なタンパク質が蓄積し、細胞死を起こしやすくなっていることを見いだした。

 この神経細胞を使って1416種類の化合物を調べた結果、27種類で細胞死を強く抑える効果を確認。特に慢性骨髄性白血病の治療薬として使われている「ボスチニブ」が有効なことが分かった。

 ALSを発症するように遺伝子を改変したマウスで実験したところ、ボスチニブを投与すると、投与しなかった場合と比べ平均で発症が約10日、生存期間が1週間程度それぞれ延びた。

 ボスチニブは、不要な物質を分解する細胞の自食作用「オートファジー」を促進させ、異常なタンパク質を減らして効果を示すことも突き止めた。今後は副作用の有無などを調べる。

 ALSは筋肉を動かす神経が変質する進行性の難病で、患者は全国で約9千人。原因不明で根本的な治療法は確立されていない。