「法律の隙間」で事故多発の公道カート 国交省が道路運送車両法の基準改正検討

 
信号待ちの間に車両から降り、写真撮影をするカートの集団=4月、東京都千代田区(加藤園子撮影、画像の一部を処理しています)

 外国人観光客らに人気がある公道でのカート走行の安全対策強化のため、国土交通省が道路運送車両法の保安基準を改正する方向で検討を進めることが4日、関係者への取材で分かった。カートは時速60キロで公道を走行できるが、シートベルトやヘルメットの装着義務はなく、都内では危険な運転や事故が問題化している。同省は今月、有識者らによる会合を立ち上げて検討を始める。

 カートは遊園地のゴーカートに似ており、都内には複数のレンタル業者がある。全長約2メートル、幅約1メートルの1人乗りで、ライトや方向指示器などが付いている。排気量50cc以下のエンジンを積んでおり、座席が路面と近いことからスピード感を味わえる。

 国交省は有識者や関係機関で車両安全対策検討会を立ち上げて議論を開始する。シートベルトの設置や、視認性を高めるため車体に取り付けるポールなどを検討材料にする予定で、道路運送車両法の保安基準について省令を改正して義務化するか議論を進めるとみられる。

 国交省によると、カートの安全対策で課題になるのが、乗り方のルールを定めた「道路交通法」と安全装置の基準を規定する「道路運送車両法」で位置付けが異なる点だ。

 警察庁が所管する道交法では、カートは「ミニカー」という自動車として扱われ、運転には普通自動車免許が必要になるが、時速60キロの法定速度で乗用車と同様に一般道を走行できる。ヘルメットの着用義務や2段階右折の必要もない。

 一方、国交省が所管する道路運送車両法では、排気量50cc以下のため「原動機付き自転車」に区分されており、シートベルトを設置しなくてよい。このため、衝突した場合は車外に投げ出され、大けがをする危険性がある。また、カートは車高が低いため、大型車など周囲の車両の死角に入りやすく、事故につながる恐れもある。

 国交省幹部は「公道カートは2つの法律の隙間にあるため、網を掛ける必要がある」との認識を示している。

 警視庁や大阪府警は5月下旬、レンタル関連業者らに安全対策の強化を要請。ヘルメットやプロテクターの着用推進や利用する外国人観光客らへの交通ルールの周知徹底のほか、走行中のスマートフォン操作、信号無視、蛇行運転をしないよう指導を求めた。

。(川畑仁志)