東電強制起訴初公判 勝俣恒久元会長、改めて謝罪もきっぱり無罪主張 「私が事故予見することは不可能」

 
福島第1原発事故をめぐる初公判のため東京地裁に入る東京電力の勝俣恒久元会長=30日午前

 「私が事故を予見することは、当時は不可能だったと考える」。東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久被告(77)、ら東電旧経営陣3人の初公判。東京地裁で最も広い104号法廷には、かすれ声ながらも、きっぱりと無罪を主張する勝俣被告の声が響き渡った。

 今回、強制起訴されたのは勝俣被告のほか、いずれも元副社長の武藤栄(67)、武黒一郎(71)の両被告で、東京地検は3人を不起訴としたが、検察審査会が平成27年7月に「起訴すべきだ」と議決。裁判所に指定された弁護士が検察官役を務め、公判が進められる。最大の争点は「3人が巨大津波の発生を予測できたのに対策を怠り、事故を引き起こしたのか」とされる。

 この日、勝俣被告ら3人は開廷1分前の午前9時59分に入廷。永渕健一裁判長は午前10時を待つことなく「おそろいなので」と開廷を宣言した。

 永渕裁判長が3人に名前などを確認すると、それぞれ勝俣被告はかすれ声、武黒被告は小さな声、武藤被告ははっきりした声で自らの名前を名乗った。

 今回は検察官役を指定弁護士が務めるが、法定内での呼称の混乱を防ぐため、永渕裁判長は「指定弁護士のことは便宜上、検察官と呼ばせてもらいます」と断りを入れた。

 続けて起訴状朗読が始まり、指定弁護士は「被告人3名は想定される自然現象により、原子炉の安全性を損なう恐れがある場合には、防護措置などの適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があった…」。

 その間、3人はほぼ動かなかったが、勝俣被告のみ時折、指定弁護士の方に視線を向けていた。

 起訴状では、従来想定を超す地震と津波が発生する可能性があり、その対策を進める義務を怠り、結果として23年に福島第1原発の原子炉建屋でのガス爆発事故などを招き、近隣の双葉病院の入院患者を避難に伴う体調悪化で死亡させたなどと指摘した。

 続けて永渕裁判長は黙秘権について説明した上で、それぞれに対して罪状認否を尋ねた。

 「起訴状に対する意見を言う前に申し上げたい」

 勝俣被告は突然そう切り出した。

 「福島第1原発から放射性物質をまき散らすという重大事故を引き起こし、(原発)周辺、福島、社会に大変な迷惑、心配をかけた。改めておわびする」

 勝俣被告は謝罪の言葉を口にした上で、「私が事故を予見することは、当時は不可能だったと考える。従って刑事責任について、私は適用されないと考えている」と前を見据え、きっぱりと答えた。続けて弁護人も「無罪を主張する」と付け加えた。

 その後、武黒被告や武藤被告も同様に謝罪の言葉を語った上で、「予見は不可能で私は無罪」「振り返ってみても事故は予見できなかった」と無罪を主張。すると、傍聴席にいた多くの報道陣が、報告するために慌ただしく法廷を出入りした。