中小企業の特許・技術を大企業で活用せよ

生かせ!知財ビジネス

 どうすれば中小企業の増益を図りつつ、イノベーション促進を支援できるのか-。特許庁は、特許などの知財情報の分析により中小企業が持つ特許・技術の活用先として適合する大企業を探索する実証研究を計画している。

 従来、大企業の持つ特許・技術や未利用特許を公開してマッチングイベントや技術移転機関のアドバイザーらを通じて中小企業に供与し、新規事業立ち上げを進める支援策は特許庁や地方自治体が実施してきた。今回は初の真逆の試みだ。「大企業と連携して中小企業の特許・技術を一過性で終わらせずに収益化を図り、次の革新的な技術創造につなげてほしい。重要なのは、きっかけと中小企業自身の気づきだ」(普及支援課)と説明する。

 大企業は中小企業の特許・技術を使うのか。都内コンサルティング会社の技術仲介担当者は「まれにだが実際にある。ニーズが重要」と言う。従来、下請けの立場でモノづくりを支えてきたが、IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)時代到来で、中小企業の開発した情報通信関連技術への注目も高まっているという。

 では活用先の探索は知財情報分析で可能なのか。一般に中小企業の保有特許件数は非常に少ない。都内の知財調査関連会社社長は「情報技術の進歩で、探索は可能だ。中小企業の場合、特許情報に加えて、面談での聞き取りを通じて公表されていないノウハウなどの情報を聞き出して分析することも必要になる」と言う。

 活用先は日本国内とは限らない。例えば日本の中小企業がアジアの企業と連携する場合、自社製品の販売先は探すが根幹技術は隠して防衛を図ろうとする。しかし海外機関の知財取引担当者は「取引を継続する中で現地のニーズを吸収し、現地企業との共同開発に至るケースは多い。活用先の探索技術ができれば面白い」とみる。

 一方、大企業による知財侵害誘発を懸念する声もある。過去、知識不足をつかれて、大企業に知財を横取りされた中小企業は少なくないからだ。

 このため財戦略支援を行う関西の知財コンサルタントは「特許庁が中小企業の知財活用を支援するのであれば、特許法を改正して、大企業などが故意に侵害した場合、損害賠償請求額に米国のような懲罰的賠償を課せられるようにすべきでは」と提言している。(知財情報&戦略システム 中岡浩)