銀座コリドー街、いつからナンパの聖地に? 飲食店は歓迎 「銀座に思えない」と困惑の声も

 
昼間のコリドー街は人通りが少ないが、夜になると様子は一変する。

 銀座コリドー通り(コリドー街)がナンパの聖地となっている。週末金曜日にはサラリーマンやOLであふれ、午後11時を回るとまっすぐ歩けないほどの混雑に。ある女性2人組は「もう一軒行かない?」などと次から次へと別の男性グループから声をかけられていた。「高級感ある大人の街」という銀座のイメージとはかけ離れ、今やコリドー街は都内有数の出会いのスポットだ。一体いつからどうしてナンパが盛んになったのか。

ビジネスマンとOLの出会いの街

 もはや「銀座らしさ」はない。銀座6丁目、JR有楽町駅と新橋駅をつなぐ高架沿いに、約0.4kmにわたりレストランやバーなどの飲食店が連なる通りがある。ここが今や都内有数の出会いのスポットとなっている「コリドー街」だ。

 プレミアムフライデーの6月30日は、月末の金曜日ということもあってか一層賑わいを見せていた。10時を過ぎると1次会を終えたサラリーマンやOLであふれ、11時を回るとまっすぐ歩けないほどの混雑に。歩道沿いで足をとめる人も多数おり、スマホをいじりながら声をかけられるのを待っているか、はたまた声をかけるかどうか道行く男女を“ジャッジ”しているかのように見える。

 渋谷や池袋で見かける光景と異なるのは、道ばたで異性をナンパするようなタイプには見えないいたって普通のビジネスマンが集っていることだ。女性側も然り、華やかな服装をした女子大生風の人もちらほらいたが、土地柄かOLが多く見受けられる。さらに男女ともに2~3人のグループ行動が目立つ。仕事帰りのスーツ姿やグループ同士での誘いに女性も安心感を抱くのか、出会ったばかりであろう男女が意気投合し乾杯する姿も目に入る。

「腐っても銀座」 飲食店は歓迎

 コリドー街はいつから“変貌”したのか、飲食店関係者に聞いてみた。コリドー街で営業しているお取り寄せダイニング「十勝屋」の白鳥雅大店長(55歳)は、「5年ほど前から人が増えましたね。コリドー街にいる人全体の2割ぐらいが声かけ目的のような気がします」と教えてくれたうえで、「街が活気づいて良いことだと思います。夜中の12時、1時でも昼間並みに人通りがあって、飲食店としてはありがたい」と喜んでいる。「うちのお店には『遊び前に腹ごしらえする』というお客様は少なく、純粋に食事を楽しんでくれる若い方や女性のお客様が増えました」と客層の幅が広がりお店にとってプラスに働いているそう。「羽目を外すお客様も一部いらっしゃいますが、他のお客様の迷惑にならないよう私の方で諌めますので問題はありません。それに“腐っても銀座”ですね。ナンパ目的でコリドー街に来ている人でも節度ある方が多いです」とトラブルもないという。

 和食居酒屋の店長は「女性従業員も退勤後に声をかけられたりするみたいです」と少し心配そう。ただ、「人が増えるのは活気があっていい」とも話し、「2年ぐらい前から若い人がぐっと増えましたね。店の中でも男性グループが女性たちに話しかけたりしていますね。悪いことは起こってないです」と今のところは目立った問題はないとのことだった。

 少し気がかりが残る関係者もいるようだが、人出が多くなったことで利用客が増えたと飲食店側はおおむね歓迎ムードだ。

まるで「地獄絵図」との声も

 コリドー街でナンパをしたことがあるという男性は「3年ぐらい前から急激に人が増えた。近くにスタンディングバーができた時期じゃないかな」と話す。たしかにオープンカフェのように入り口や壁を開放していたり、地下でクラブミュージックを流したりするバーの周辺はとくに人だかりができている。残念ながら今回はスタンディングバーに話を聞くことはできなかったが、隣の客と交流しやすい立ち飲みのお店が増えたことで、社交場を求めてコリドー街にやってくる若者が増えたのかもしれない。

 さらに話を聞いて回ると、コリドー街にあるオフィスに勤務する23歳男性会社員は「仕事が終わって会社を出たら地獄絵図みたい。会社の前でつぶれてたり、女の子がコンビニで栄養ドリンクを飲んで気合を入れてたり。銀座に思えない。荒れてる」と、困惑していた。いつから騒々しくなったのか聞くと、「きっかけは分からないけど、テレビで取り上げられてからさらに人が増えたと聞いた」とのこと。2016年7月放送の「マツコ会議」(日テレ系)では、婚活中の女性の間で「銀座コリドー街で一流サラリーマンに出会える」と話題になっていることを紹介している。それを見た視聴者がさらに舞い込むようになったのではないかとも話していた。

 今はナンパ目的でコリドー街を訪れる若者も、今後は銀座の中心である三越や和光が軒を連ねる4丁目交差点や高級ブティックが並ぶ中央通りへと足を伸ばすようになるかもしれない。そうやって、マナーはもとより粋や嗜みを身につけ、「本来の銀座」に似合う大人になってくれれば。戸惑うコリドー街の関係者らもそんな思いで見守っているのかもしれない。(SankeiBiz 久住梨子)