籠池節は健在「トカゲの尻尾切りするな」「府職員からは懇切指導」
籠池氏招致詳報(1)学校法人森友学園(大阪市)が大阪府豊中市の元国有地で開校を目指していた小学校の設置認可申請をめぐる問題で、大阪府議会は10日、臨時会を開き、学園の籠(かご)池(いけ)泰典前理事長を参考人招致した。府私学審議会が条件付きで「認可適当」と答申した経緯の検証が不十分として、自民党が参考人招致を要求。本人が応じる意向を示し、実現した。大阪地検特捜部が補助金の不正受給容疑で学園側への強制捜査に着手した中、渦中の人物は何を語るのか。
《一般傍聴席は130席が用意されたが、ほぼ満席。籠池氏は弁護士の補助者をともなって議場に姿をみせた。冒頭に九州豪雨へのお見舞いの言葉を述べ、本題に入った》
籠池氏「森友学園の経営を引き継ぎ、天皇国日本、日本国のため、国民のためと意識し、大阪府市並びに行政当局からまことに親切な指導をいただき、学校経営に邁進してきた。私の進める教育方針に理解をいただき、大阪維新の会の府議、市議、国会議員までもが、何度も塚本幼稚園をはじめとする私どもの教育施設にお越しいただいたことには感謝している。塚本幼稚園隣接の公園の緑地化に対して、こちらからお願いする前に維新の先生が行政にかけあってくれたことなど、陰ひなたの支援があったのだと思う」
《議場からは笑いが起こる。かねて認可をめぐって大阪維新の会代表の松井一郎知事に『はしごを外された』と敵意をあらわにしている籠池氏。以前は維新側からさまざまな『便宜』があったことを示唆し、手のひら返しをあてこすった格好だ》
籠池氏「その一方で府議、市議のみなさんの指導を受け、少々舞い上がっていたところも私の中にある。結果として『瑞穂の國記念小学院』設置に向け、みなさまの疑念を惹起する内容が生じ、不行き届きが発生した。こうした点への責任を明確にし、小学校建設に至らなかった責任をとるため、3月末に理事長を退任し、経営から完全に離脱した。
現在、森友学園は新しい理事長のもと、管財人の監督を受けつつ、法人再生を目指していると聞き及んでいる。私の不行き届きで疑念を生じさせ、関係者や保護者、児童におわび申し上げる」
《学園は小学校開設を断念したことで多額の負債を抱えて民事再生法の適用を申請。現在は籠池氏の長女、町浪氏が理事長を引き継いでいる》
籠池氏「ご承知の通り、地検特捜部による強制捜査が行われ、あらゆる資料が没収された。申し述べるのはあくまでも記憶に基づくものであるとご承知おきをお願いしたい。学園の新体制は反省すべきは反省し、新たな方針での学園運営に取り組んでいると聞き及んでいる。私の記憶のみに基づく証言が一人歩きをし、新体制に悪影響を及ぶのは避けねばならず、慎重に回答せねばならないことはあらかじめ申し上げる。手元に残った備忘録まで検察に押収されたので、このようなお断りを申し上げてる。何卒ご理解をお願い申し上げる」
《刑事事件に関すること、問題の核心部分については正確な回答ができないと牽制するような発言だ。籠池氏の弁明は続く》
籠池氏「大阪府との折衝はすべて当時の顧問弁護士の酒井(康生)弁護士に一任していた。当時、酒井氏が財務省近畿財務局や大阪府私学課とどのような折衝をしていたか報告がほとんどなく、私としても皆目見当がつかない。
今年3月10日、設置認可取り下げまで、弁護士のアドバイスに従っており、森友学園と府の間にどのような交渉があったのかの経緯は、私よりも酒井氏に聞いた方が真相究明に寄与するものと思う」
《ここで籠池氏はさらに酒井弁護士の責任に言及し、語気を強めてこう宣言した》
「酒井氏も府議会から要請があれば証言することはやぶさかでないと思うが、当方との守秘義務がある。そこで酒井氏のためにもこの場を借りて、守秘義務を解除することを宣言する」
《議場全体から「おー」との歓声が上がる》
籠池氏「新しい国を支える人材を育てる小学校をつくることはかねてからの念願だった。(学園の)創設者も模索していたが、さまざまな規制でさえぎられ、計画が出るたび頓挫していた。私が平成7年に経営を引き継いでも変化はなかったが、情勢が変化したのは19年。第1次安倍政権のもと、教育基本法が改正された。私は愛国教育の先駆けになろうと教育の充実に努め、各方面から賛同の声が寄せられるようになった。議員も視察に来るようになった。人を介して、安倍晋三先生、昭恵氏とも知り合った。24年2月には日本教育再生会議のシンポジウムがあり、安倍晋三首相と松井一郎知事が同席した教育シンポジウムの後から、学園を取り巻く環境に大きな変化が起きた。大阪でも教育再生の掛け声が高まり、維新の先生が幼稚園に視察に来るような情勢となった。こうした情勢の中、今なら小学校建設が実現するだろうと府への申請にふみきった。
府の職員はさまざま懇切丁寧に指導くださったこと、ありがたい思い出です。ありがとうございます。指導内容は私学審議会に対してどういう書類を出すべきか、いつ出すべきか微に入り細に入り指導していただいた。職員各位に改めて御礼申し上げる。ありがとうございます」
《籠池氏は首相と知事の意向により、小学校の話が一気に進展したことを示唆した。冒頭発言の最後では自ら、森友問題の“真相究明”を訴え、今後は法的強制力のある110条委員会を設置して疑惑を追及するよう求めた》
籠池氏「強制捜査で、手元にあらゆる資料がない。府議会の質問にどこまで正確に答えられるか不安。3月の国会の証人喚問と違い、今回はあくまで参考人招致。不明確なこともあるかもしれない。国有地の大幅値引きなどあり得ないことがたくさんあった。その真相を明らかにするために私をトカゲの尻尾切りとするのではなく、松井一郎知事、私学課長、酒井弁護士ら関係者を議会に呼んで真相究明をお願いする」
■詳報(2)刑事関わる質問「時間の無駄」といらだち、かみ合わぬ議論に失笑 に続く
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