嶋野邦彦特許技監に聞く(上)

生かせ!知財ビジネス

 ■使命考え“不易流行”の姿勢で

 特許庁の特許技監に7月5日付で嶋野邦彦氏が就任した。特許技監は長官に次ぐポストで、特許行政の専門官僚である特許庁採用職員のトップに位置する。今後の姿勢などについて聞いた。

 --着任した感想は

 「特許庁の使命をよく考えて仕事をしたい。日本の経済発展に知財の観点からどう貢献するのか、日本の知財制度を使ってくれる世界のユーザーへどう貢献するのかである。これら2つの使命があるという視点から、さまざまな施策の是非をよく考え、“不易流行”(普遍的本質と変化を見極めること)の姿勢で進めていきたい」

 --不易流行の姿勢とは、具体的にどういうことか

 「“不易”な部分では、まず“早期に安定した権利を設定する”すなわち“世界最速、最高品質を目指す”ことは絶対に大事なことだ。そのためには審査部門、審判部門だけでなく裁判所も含め、知財システムの上流から下流までを見据えながら取り組んでいきたい」

 --知財システム全体を俯瞰(ふかん)する必要があると

 「例えば、審査や審判に関する実務では従来、庁内で実施目標を策定しているが、審判制度に関しては裁判官もオブザーバーとして参加した実務者研究会を庁内で開いて互いに学んでいる。一方、特許制度や裁判制度のユーザーに各国各機関の問題意識を見せることも重要だと考えている。今秋、最高裁などと国際知財司法シンポジウムを共催し、中韓・ASEAN(東南アジア諸国連合)12カ国の裁判官を招いて模擬裁判などを行う。来年は日米欧の裁判官や審判官の招聘(しょうへい)を検討している」

 --“流行”への施策という観点ではどうか

 「技術にはいろいろな流れがあるが、新たな技術の流れに応じた施策は、“流行”の領域だと思う。現在、第4次産業革命が話題だが、IoT(モノのインターネット)によってIT技術が製造業に限らず、教育、農業、医療など他の技術と融合し、新たな融合技術が生まれている。ITの担当は審査第4部だが、これからはすべての審査部門で誰が審査しても同じような結果がでるようにしていくことが大事だ。このためコンピューターソフトウエア関連発明の審査基準を各審査部門で横断的に使える内容に充実させたのに加え、新たにIoT審査チームを作った」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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【プロフィル】嶋野邦彦

 しまの・くにひこ 早大大学院修了。1985年特許庁入庁。95年外務省経済局、2013年審査第四部長、15年審判部長などを経て、17年7月から現職。57歳。神奈川県出身。