嶋野邦彦特許技監に聞く(下)

生かせ!知財ビジネス
「日本はIT関連特許が欧米より比較的認められやすい」と説明する嶋野邦彦特許技監。この環境をIoT戦略にどう生かすのか

 ■出願増加の好機、IoT関連期待

 特許庁の長官に次ぐポストである特許技監に7月5日付で就任した嶋野邦彦氏。急速に進む第4次産業革命に関する課題について聞いた。

 --第4次産業革命やIoT(モノのインターネット)が話題になり“情報財”という新概念が生まれた

 「知的財産といわれているものを超えて価値のあるものが生まれてきている。例えばデータだ。知財を含めそれらをどう管理するのか、ビジネスで生かすためどう流通ややり取りをするかが各方面で議論されている」

 --企業では、情報財担当は知財部門になるのか

 「確かに一番近いものは知財部門だと思う。だが知財部門の対応も企業によってさまざまで、特許の権利化業務や権利行使に集中している場合や、ノウハウを含めて知財部門で管理している場合もある。新しい価値の周辺が膨らんでいろいろな価値が生み出されているときに、知財部門で手が回らないなら、少し上位の部門で対応していくかとか、切り出して新しいセクションを作らないといけないだろう。そこは課題になるのかなと思う」

 --情報財が出現する一方、国内での特許出願件数は近年、31万件台で微減傾向にあるが

 「若干残念な感じはしている。しかし、かつてプログラムを特許で保護すると決めて以降、電子商取引関係の特許が出されたように、IoTの登場で農業や教育分野もIoT技術と融合して特許の範疇(はんちゅう)に入ってきた。特許は第2次産業だけだったのが、今や第1次から第3次までのすべての産業が入っている」

 --つまり、特許出願は増加の可能性があると

 「個人的には潜在的な可能性があり、今はチャンスだと思っている。IoTが真に必要とされるビジネス分野ではどんどん出されるだろう。新たな特許庁ユーザー獲得へ向けての働きかけも必要になろう」

 --国際的には

 「米国ではある最高裁判決後、ITがらみの特許は登録しにくくなった。欧州は特許庁審査で特許の成立性ではなく進歩性を厳しく見ている。日本は独自のコンピューターソフトウエア関連発明の審査基準があり比較的多くの特許を認めている。大事なことはビジネスを阻害しないよう適正に判断すること。今後も特許庁はがんばっていく」(知財情報&戦略システム 中岡浩)