データ・情報解析のための「スペース」作り始まる

生かせ!知財ビジネス
データ保有者や解析、活用の専門家の出会いの場作りを提唱するイーパテントの野崎篤志氏(左)とVALUENEXの中村達生氏

 日本のAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)時代における発展に向け、データの保有者や解析、活用の専門家がより高い次元から論議する場をつくる動きが出てきた。「次世代情報解析スペース」(Next Generation Information Analytics Space=NGIAS)は、活動開始と賛同者獲得のためキックオフカンファレンスの準備を進めている。

 NGIASの発起人は新進の知財情報コンサルティング会社、イーパテント(東京都港区)の野崎篤志社長とアルゴリズム開発会社として日米欧で活動するVALUENEX(同文京区)の中村達生最高経営責任者(CEO)だ。多様な業界・業種にわたるデータ保有者、AI、オペレーションズリサーチ、マーケット分析、金融工学、知財などの実務家や研究者をメンバーに、よりオープンで俯瞰(ふかん)的、横断的な論議の啓蒙(けいもう)と実施を目指している。

 運営事務局を務める野崎氏は「データに関して、日本では企業や学会の考え方も行動も外部に開かれていない面がある。今後、データ解析や活用の高度化を進めるには組織の垣根を越えた連携が欠かせない」と力説する。

 例えば機械、金融、メディカルなどの業界・業種、大学・研究機関には特許や論文データの他にも、膨大なデータが蓄積され、多くの知見を有する実務家や研究者が存在する。より俯瞰的な視点で組み合わせ、新たなデータの生成・解析、戦略や事業構築の可能性がある。

 ある企業幹部は「社内データのオープン化は新事業開発の種となるが、実はグループ企業内でさえ進んでいない」と漏らす。企業ではオープンイノベーションが認知され、知財部門では特許・技術の開放、導入が進みつつあるが、データに関しては未知の課題となっている。

 NGIASの狙いはもう一つある。データサイエンティストや、データ関連事業者としての矜持(きょうじ)だ。中村氏は「データや解析手法、結果を正しく扱い、どのような判断を下すのか、一般の素人を絶対ごまかさないという意識を醸成することだ」と真剣に話す。出された結果について専門家として正しく判断し、提供し続けないと、AI・IoT時代を担うべきデータ解析業界が誰からも信用されなくなり、国力低下を招く可能性があるからだ。

 キックオフコンファレンスの概要は近く、ウェブ上で発表される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)