東京五輪サイバー対策 進むIoT活用 脅威も増大 制度設計急務

 
リオ大会のテクノロジー・オペレーション・センター=2016年8月(アトス提供)

 世界の注目を集める東京五輪・パラリンピックは、悪意を持つハッカーにとっても格好のターゲットとなる。サイバー攻撃の激化が予想される中、どう守るのかが重要課題だ。さまざまな機器をインターネットにつなぐ「IoT(モノのインターネット)」時代になり、ハッカーが攻撃できる対象が増える。大会組織委員会や政府は「見えない敵」とどう戦っていくのか。

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 2億5500万回と5億1000万回。2012年のロンドン大会と昨年のリオデジャネイロ大会で、2週間あまりの五輪期間中にあった攻撃の回数だ。

 ◆通信量、前々回の30倍

 両大会のITシステムを統括したフランスのIT企業、アトスによると、いずれも防御したため実害はなかった。しかし、東京大会ではモバイル機器やIoT機器の活用が進むことで、飛び交う通信量はロンドン大会の30倍にもなるという。「それだけサイバーセキュリティーの脅威も増す」(同社)

 セキュリティー業界の関係者によると、偽チケットの販売サイトがつくられるといった金銭目的の犯罪や、大会サイトの改竄(かいざん)、大会のコンピューターに侵入してシステムやデータを破壊する「サイバーテロ」といったさまざまなリスクが想定される。

 競技場のビデオボードが乗っ取られたり、計測機器に偽の記録を表示したりするといったことも不可能とは言い切れない。ハッカーはシステムにあるセキュリティー上の穴(脆弱(ぜいじゃく)性)を狙って攻撃を仕掛ける。大会関係者は「セキュリティーの穴を塞いでも、攻撃者はまた次の穴を見つけ出す」と警戒を強める。

 選手村の管理、観客や物品の輸送、チケット販売などは、専門業者のシステムを大会組織委員会が開発する財務会計などのシステムに接続する。組織委の舘剛司テクノロジーサービス局長は「こうした部分にセキュリティー上の弱点を残さないようなシステムの設計が鍵となる」と話す。

 ◆端末が「踏み台」に

 急増するIoT機器もハッカーに狙われている。これまでに、家庭で使われる監視カメラやルーターが乗っ取られるケースが多発している。これらの機器は遠隔操作され、企業サイトに大量のデータを送り付けて、サービスを停止させる「DDoS攻撃」に悪用されていた。

 東京大会では、心拍計付きのスマートウオッチなど選手が身に着けて会場に持ち込むものも増えそうだ。意外なIoT機器が、大会システムを攻撃する「踏み台」になる可能性もある。

 多くのリスクがある中、東京電機大の安田浩学長(応用情報工学)は、システム整備の進行状況を気にしている。セキュリティー対策をきちんとするためには、システムを早期につくるべきだという。「本番まで3年を切ったのに進行が遅いのではないか。組織委や政府がセキュリティーにかける費用も少ない」

 17日間の五輪期間中は、大会のテクノロジー・オペレーション・センターで24時間監視を行う。不具合があってもシステムを止めることはできない。組織委サイバー攻撃対処部の中西克彦課長は「考えられる脅威には万全の態勢を敷き、職員らの訓練を繰り返すしかない」と意気込んだ。