山手線や日比谷線に新駅 東京五輪に備え交通網の整備急ピッチ 既存インフラ活用
2020年東京五輪・パラリンピックに向け、観客や選手の輸送を担う鉄道や道路など交通インフラの整備が急ピッチで進んでいる。鉄道や地下鉄の新駅開業や新型車両の導入、高速道路の延伸開通…。五輪開催時に首都圏の公共交通網はどう変わるのか。
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1964年秋に開催された前回の東京五輪では、東海道新幹線や地下鉄、首都高速道路など東京を中心とする交通インフラの整備が国主導で一気に進んだ。戦後、欧米に比べ立ち遅れていた首都圏の交通事情は一変、70年代まで続く高度経済成長をもたらす原動力になったとされる。
これに対し、2020年東京五輪・パラリンピックでは、東京都が招致段階から「既存の交通インフラを生かし、開催費用を節減する」として、地下鉄やバスなど現在ある公共交通網をフル活用する方針を打ち出した。
13年の招致決定後には、JR東日本の「羽田空港アクセス線」など複数の新線構想が浮上したものの、膨大な建設費など課題が多く検討は先送りされた。
一方、既存の鉄道や地下鉄の路線では、20年までに新駅開業に加え、各会場の最寄り駅を中心に機能強化が図られる。
半世紀ぶりの新駅
鉄道では、JR東日本が20年春に山手線の約半世紀ぶりの新駅となる「品川新駅」(仮称)を暫定開業するほか、山手線に新型車両を導入。メインスタジアムの新国立競技場の最寄り駅となる千駄ケ谷駅のホーム整備など都内の駅施設の改修に取り組む。
地下鉄では、東京メトロが20年に日比谷線に「虎ノ門新駅」(仮称)を暫定開業する。新駅のそばには臨海部の会場を結ぶ高速バスシステム(BRT)などが発着するバスターミナルも新設される計画。東京メトロの日比谷線や千代田線、新交通システム「ゆりかもめ」などは、20年度までに全車両が新型車両に置き換えられる予定だ。
首都圏の高速道路網は、環状道路を中心に拡充される。東京外郭環状道路(外環道)の三郷南インターチェンジ(IC)-高谷ジャンクション(JCT)間は17年度中に開通。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の藤沢IC-釜利谷JCT間も20年度中の開通を目指して用地取得を進めている。
都内のタクシー各社は、乗り降りしやすく燃費も優れたミニバンタイプの新型車への置き換えを推進。東京都などは「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池バスをBRTや一般の路線バスに大量導入する。
環状2号線が懸案
最大の懸案は、臨海部と内陸部を結ぶ主要アクセス道路の環状2号線(全長約14キロ)だ。
2号線完成後、選手村-新国立競技場の所要時間は現在の25分から10分に短縮される予定だが、ルート上にある築地市場の度重なる移転延期の影響で、新橋-豊洲(3.4キロ)が未開通となっている。
大会組織委員会は18年度中に観客や選手の輸送計画を取りまとめる。広報担当者は「大会運営に支障が出ないよう、東京都は2号線整備に関する見通しを早く示してほしい」と話した。
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■全国でバリアフリー化も推進
東京五輪・パラリンピックを機に、お年寄りや体の不自由な人が快適な日常を過ごし、観光を楽しめる社会をつくるため、政府は2020年度末までの達成目標を定め全国で交通網のバリアフリー化を進めている。「誰もが自由に移動できる社会」をレガシー(遺産)の一つとしたい考えだ。
1日の利用者が3000人以上いる鉄道駅や空港、バスターミナルでは、エレベーターや点字ブロック、障害者対応トイレの設置などを進める。
鉄道の場合、全国の駅の約40%が対象で、15年度末で86%だった達成率を20年度末までに100%にする。
転落防止のためのホームドア設置駅も、16年度末の686から800に増やす。
駅やスーパー、病院などが集まる地区で国がバリアフリー化の重点に指定した道路計1700キロでは、歩道の拡幅、歩道橋へのエレベーター設置といった対策を20年度末までに完了させる。16年度末の達成率は88%となっている。
車いすのまま乗れる福祉タクシーは、全国での稼働数を15年度末の約1万5000台から、約2万8000台に増やす目標だ。コストが高いため、まずは東京都内で普及させ、順次地方に広げていく。
段差がなく乗り降りしやすい「ノンステップバス」の導入も進める。一般の乗り合いバスでの導入率は15年度末時点で50%にとどまるが、70%まで引き上げる。
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