【論風】国難論議皆無の国会に失望 マサチューセッツ工科大学客員教授・庄子幹雄

 
衆院本会議で内閣不信任案を提出し趣旨弁明を行う立憲民主党・枝野幸男代表。議場には空席が目立った=20日午後、国会(春名中撮影)

 6月12日、シンガポールで鳴り物入りで行われたトランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談。思うがままに行動し、意に沿わなければ即刻切り捨てるそんな性分の2人、意気投合するのに時間を要しない。しかし、世界中の耳目を集めてのこの華麗な仮面舞台も、終わってみれば猿芝居にも劣る結実ゼロの狂言。猿芝居であれば観客を結構楽しませるのに、それさえどこにも見いだせない。

 一枚上の金委員長

 当然ながらそこには全世界が嘱望する「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」などどこにも伺い得ない。トランプ氏には時に脅迫まがいの言辞を弄しつつも、舞台に引きずり出した金氏に対し、毅然(きぜん)とした態度で何か一つは解決に至る結論をと期待していただけに失望この上ない。

 対する金氏は中国の習近平国家主席と入念な事前打ち合わせを行い、プーチン露大統領、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領とも自分の考え、相手の出方に対する対応について説明し、それなりの了解を取り付けていたに相違ない。懐深く、にこやかな態度に終始する。

 トランプ氏が短時間故に具体的な詰めは後に行う実務者会議任せで十分なりと喧伝(けんでん)しているのに対し、金氏は自分の意を体する腹心にしっかりと体制維持はもとより自国への経済援助取り付けを主張させるだろう。つまりCVIDはできるだけ論議を先延ばしにして、あるいは空論化させ、トランプ氏が確約した経済援助だけは要求する。

 しかもトランプ氏の米国からの援助は一切なし、その任を日本、韓国に委ねるとの発言はあまりにも韜晦(とうかい)、そこには「アメリカ・ファースト」の狭隘(きょうあい)な身勝手さしか見えてこない。

 そうなれば間違いなくわが国が援助責務のほとんどを果たすことになろう。それは1965年に8億ドル(現在の価値で1兆円ほどか)を拠出し、これを元に「漢江の奇跡」といわれる経済復興を成し遂げた韓国を学んでいるからである。鉄道も橋も作られ、さらには産業界への投資が行われ今の韓国経済の起爆、成長剤になっていることを金氏が先刻承知しているからである。

 金氏はこれを前例として前倒ししてわが国に対する経済援助要求を際限もなく引き上げて来ることが予想される。それだけにわが国は拉致問題の解決を先行させ、経済援助はその次に話し合うという明確な国の指針を確立しておく必要がある。

 愚問の連続

 ところがである。わが国会は2年以上もの時間をかけてのモリカケ・ショーである。米朝首脳会談でのトランプ・ショーは金氏の賢明さがあらためて全世界に伝わり、それなりに意義深かったが、モリカケ・ショーは野党の愚かさばかり。国会論議を恒間見ると、マスコミ報道のデータを基に倒閣のみを目指す野党議員からの同じ質問の繰り返しである。今こそ国際平和、その中での北朝鮮問題の解決に向けて奔走する安倍晋三首相を一致団結して支えていく姿勢こそをと願うのは全国民の期待のはず。それがなんとかしてモリカケ答弁者から失言を引き出そうとする中身のない愚問の連続で、ほとんどの国民はいらだち、腹立たしく、失望の念を深めているのである。

 しかし、与党、野党の質疑時間が2割、8割となっている割り振りの現状では、将来の国難に対し、どう対処すべきかの論議に焦点を当てることは極めて困難。筆者の属する学会では発表の場を持てなかった会員にはおのおのの研究発表テーマを会場に掲示する方法がとられる。国の将来を考える絶対多数の与党議員に2割の時間配分しか与えられない現在の国会では会期延長でも中身の全く乏しい質問を繰り出す野党の宣伝の場になるに過ぎない。何卒、将来のわが国の諸政策を論ずるにふさわしい人数比割り振りの場にしてもらいたい。会期延長に伴い貴重な税金が支払われる。6議席増などを持ち出す与党もどうかとは思うが…。

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【プロフィル】庄子幹雄

 しょうじ・みきお 東大農卒、1961年鹿島入社。2005年同社副社長退任。元日本計算工学会会長。07年NPO法人「環境立国」理事長。1996年から米ユタ大学名誉教授、2006年から現職。元経団連環境委員会部会長。元経済同友会諮問委員会委員。オリックス顧問。芝浦工業大学客員教授。京都大学工学博士。82歳。宮城県出身。