国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防の開門調査をめぐり、地元住民や農漁業者らが16日、開門に反対する総決起大会を諫早市内で開き、「生活を脅かす暴挙だ」として開門しないよう国に求める決議を採択した。平成22年12月に福岡高裁判決が命じた開門期限まであと半年。当時の菅直人首相が“政治主導”の名の下に、上告を断念したことで生じた地元自治体や住民の不満は、高まる一方となっている。(田中一世)
大会には約2200人が参加した。中村法道知事は「確定判決には問題がある。開門をしないよう要求しても、国は責務があると繰り返すばかりだ。訴訟の当事者ではない長崎県民が被害を受けることはあってはならない」と国の姿勢を批判した。
長崎県や諫早市、住民が怒りをあらわにするのは「干拓事業を進めてきた農水省が、地元理解を得ないまま開門準備を進めている」との不満からだ。
農水省は先月28日、開門後の農業用水確保のための「海水淡水化施設」の設置工事契約を業者と結んだと明らかにした。だが、淡水化施設だけで、開門後に必要な農業用水をまかなえるのかなどは不透明なまま。決議はこの契約について「事前対策の不備を指摘する地元の声を無視して強行した。万全の事前対策を示さなければ国との協議に応じない」と、強く異議を唱えた。