商標の管理もせずに勝手に使わせておくと、普通名称化してしまう。私は登録商標「うどんすき」をめぐって最高裁まで争った経緯がある。だが残念ながら普通名称化したとの判断を覆すことはできなかった。管理をしようにもできなかった。1992年3月まではサービスマーク登録制度がなく、飲食店内での使用を規制できなかったためだ。
普通名称化した商標には「エスカレーター」「トランポリン」「ナイロン」などがある。普通名称化を防ぐには、まず無権利者による商標の乱用を阻止しなければならない。次の3点にも留意してほしい。(1)「エスカレーター」であれば自走階段など、商標には商品の普通名称や代替名称を併記(2)「登録商標」「TM」など登録商標であることを明記(3)「Xerox」などのように英字商標の頭文字や全体を大文字にし、名詞や動詞として使えないようにする。
「商標は無休、無言のセールスマン」であり、企業を代表する貴重な「顔」である。
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【プロフィル】西郷義美
さいごう・よしみ 大同大工卒。1969年オマーク・ジャパン入社。75年祐川国際特許事務所に勤務。76年西郷国際特許事務所を設立。2008年4月から日本弁理士会副会長を1年間務めた。弁理士と特定侵害訴訟代理人の資格を持つ。69歳。