【ロンドン=内藤泰朗】英BBC放送は24日、鉄を素材にした抽象彫刻で知られる英国の彫刻家で、1992年に第4回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)を受賞したアンソニー・カロ氏が心臓発作で死去したと報じた。89歳だった。
ロンドン郊外のサリー州出身。ケンブリッジ大学で工学を学んだ。学生時代から彫刻を始めた。20代後半には彫刻家のヘンリー・ムーアの助手を務めながら彫刻を学んだ。
59年に渡米し、アメリカの前衛美術に触れて初期の具象的作風を一変させ、翌60年に帰国して鉄を溶接して彩色した抽象彫刻を発表。世界の彫刻界に衝撃を与えた。
鉄の彫刻はその後も深化を続け、「鉄はさびるものである」という考えから、まったく彩色せず、赤さびが出はじめた鉄を使った構成的作品を制作した。