確かに、プロジェクト開始前に企業で眠っていた技術が次々と引き出されています。66キロボルトの大容量ライザーケーブルや浮体式洋上変電設備の開発、どれも日本が誇る最先端技術です。それでも、実際の海に出てみれば、ケーブルが海底に落ちたり、海中でよじれたワイヤを慌てて船を回転させてほどいたり、工事をしたくても波が高くて浮体に乗り移れなかったり、苦労の連続。これを克服しながら、厳しい気象や海象条件を耐え抜く浮体式洋上風力の性能評価や事業性の検証、洋上観測システムの構築、海鳥の生息状況などの周辺環境との共生などを、今後進めて行くことになります。
◆漁業との共生も図る
「漁業との共生」も実証研究の大事な目的の一つ。プロジェクト開始前から地元の漁業関係者らと話し合いを重ね、今後は連携しながら環境調査や新たな漁法の開発なども行っていきます。
将来的には大規模な洋上風力発電事業に発展していくことをめざしています。実用化へ移行すれば、県内企業の新規参入や雇用の創出につながるでしょう。この実証研究で何を一番期待しているのか、村上課長に聞きました。
「再生可能エネルギーに託された夢を、形にすることです」
再生可能エネルギーのロマンと可能性を実感した一日でした。
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【プロフィル】松本真由美
まつもと・まゆみ 東京大学教養学部客員准教授(環境エネルギー科学特別部門)。上智大学在学中からテレビ朝日のニュース番組に出演。NHK-BS1ワールドニュースキャスターなどを務める。環境コミュニケーション、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する傍ら、シンポジウムのコーディネーターや講演、執筆活動などを行っている。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事。