そもそも音楽の受容と評価において、聴取者は作品とその演奏を自身で判断する前に、音楽雑誌や新聞の特選などの情報や風評、そしてテレビのニュースで紹介される情報によるさまざまなバイアスとフィルターに踊らされていることはないだろうか。たしかにメディアからの情報は便利であるが、そこに個々人の自立した判断力が機能せず、判断停止の状態でメディアからの情報を是として受け入れる環境が醸成されているのではないか。
しかし、メディアに対する私たちの無批判を批判してはならない。そもそも、私たちの知りうる音楽の情報は限られているのである。CDとしてリリースされ、流通している作品情報は、音楽史において生み出された無限に豊饒(ほうじょう)な音楽作品のなかのごく一部にすぎなく、CD化されるのは特定の作曲家の特定の作品にほとんどが占められ、その選曲はメジャーのCDメーカーの営業戦略に委ねられているのが現実である。
そもそも私たちは総合的な知識をもとに音楽と作品の良しあしを客観的に判断できる状況には置かれていないのである。そこにメディアに流されやすい環境が生み出される素地がある。