Bさんは電気あんかを使っていたらあんかとその周りが焼けていた。あんかをしまうとき電源コードを周りに巻き付けていたところ、コードの中の電線が切れ、そこから火が出たらしい。
◆古い電気製品の劣化で出火
コードに限らず、製品が古くなると劣化して火が出ることがある。Cさんの家では、扇風機から突然火が出た。この扇風機は39年前に買ったもので、内部の絶縁材が劣化しショートしたようだ。断線したコードもおそらく古い製品で、経年劣化に加え引っ張りや曲げ伸ばしなどが繰り返されていたのだろう。
これらの例では焼けた範囲が限られていたので原因が特定できた。住宅が全焼すると、出火原因がわからない場合も多い。最初の火は小さくても、周りに燃えやすいものがあれば、火は広がる。07年には、古い扇風機が火元となった火災で、ご夫婦が亡くなった。
火災の原因がわかれば、行動すべきことは明らかだ。使う人は、コードを引っ張らず、できるだけ曲げずねじらず、古い器具は買い替える。メーカーや輸入事業者は、問題が起きにくい材料や形について考える。お店や通販業者は、製品の仕入れを工夫し、安全な製品や問題が起きた使い方などについてお客さまにお知らせする。みんながこういう行動をとると、次の火事が防げるだけでなく、私たちの集団全体のこれからの発展にもつながる。
誰かが困った経験には、今後の発展のヒントが埋まっている。たとえ直接に困ったのが自分でなくとも、そこから何かをつかみ取れるといい。
現代人は、過去の人類の努力で火や文字を得た。一方、エネルギー消費が増加する中で、電気による火災など新たなリスクにも直面している。また、ネットを含め文字があふれる中で、かえって大事な情報を見逃したり、あまり考えず忘れ去ったりしがちだ。私たちも、誰かが困ったことをじっくり見つめ、そこから考え行動する人類でありたい。