【アジアの目】ウクライナ危機に見る中国の思惑(上) (2/3ページ)

2014.4.3 05:00

 こうしてみると、いかにも中国が「クリミア効果」で漁夫の利を得ているように思われる。実際、ウクライナ危機に対して中国がとった曖昧でどっち付かずの態度がこの疑いを強めている。

 しかし、中国にとってもウクライナ危機から派生する懸念がないわけではない。何よりもまず、中国への統一に抵抗してきた台湾がこれを機に一段と独立に傾く懸念である。

 ◆住民投票、絶対認めず

 ロシアによるクリミア併合の大義名分はあくまでも「住民投票」であった。その大義名分を中国が認める素振りを少しでも見せてしまえば、台湾が「住民投票」を実施し、「台湾独立」という結果にでもなったら、中国はそれを阻止する根拠を失ってしまう。実際、台湾にはそのような住民投票法があるから、中国は内心穏やかではない。

 同じことは独立機運が盛んなチベットと新疆についてもいえるから、「住民投票による領土の現状変更」は中国としては絶対に認められないのである。

 この点に関しては日本も中国と立場は一致しているといえる。ロシア人しかいない今の北方領土で帰属を決める住民投票でも実施されたら、結論は火を見るよりも明らかである。

 このように、ロシアの横暴なクリミア併合に対して、国際社会が手も足も出ない事態は、極東にまでさまざまな影響を及ぼしている。

 領土問題のほかにも、直接影響を受けるのは、日本も大きな関心を持つロシアの天然ガスをめぐる情勢である。エネルギーに飢える中国は、豊富な地下資源がある中央アジアに積極的に進出を図っている。

 中国の最終目標はその向こうの中東に到達することだ。同時に、中国はロシアの豊富な天然ガスにも食指を動かし、数年前から輸入交渉を進めている。次回は天然ガスをめぐる動きに焦点を当てる。

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