福島県の農業者がセシウム吸着対策で活用を推進している天然カリウム=福島県二本松市の二本松農園【拡大】
原発事故から3年以上が過ぎ、福島県では農業者自身が独自に放射性セシウムの吸着抑制技術を実証している。国などからの公的支援は技術の内容や対応速度の面で、被災現場とは必ずしもマッチしないことが生じるため、実証した内容を積極的に提言することで、現場が適切と望む公的支援を得て、復興を図るのが狙いだ。
5月下旬、福島県二本松市で農園を営む齊藤登氏の元に同市から初めて天然カリウム(天カリ)肥料が届いた。1000平方メートル当たり40キロを散布するため、水稲作付面積約3万9000平方メートル分で計1560キロだ。
被災後に配布された塩化カリウム(塩カリ)肥料は、稲の育成効果に加え、放射性セシウムの吸着を抑制する性質がある。国の指導と助成の下、福島県営農再開支援基金で2013年度から塩カリを配布。今月4日までの全量全袋検査(スクリーニング検査)結果は、13年産米1096万9196袋(1袋30キロ)のうち99.93%は放射性セシウムが検出されなかった(測定下限値は1キロ当たり25ベクレル、ふくしまの恵み安全対策協議会調べ)。
だが「農家にとって大事なのは農作物だけではない」(齊藤氏)。現場では配布当初から「塩カリは土壌中の微生物を死滅させ、土壌がやせるだけでなく、米の食味に影響を及ぼす」との声が上がっていた。さらに有機栽培農家は、塩カリを使うと有機農産物の公的認定を取り消されてしまう。このため齋藤氏ら農業者が集まり、食味が向上し土壌微生物に影響のない天カリの利用を選択できるよう市や県、国へ陳情した。
しかし、一度決まった塩カリの配布を覆すのは難しい。齊藤氏らは昨年、農業者グループの一員であり、技術協力企業であるJMC(郡山市)の佐藤雅人氏らと検討し、中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)の横山和成博士の指導を受け、天カリを自前で購入し、齊藤氏の水田の土壌を使って実証実験をした。この結果、土壌微生物の活性化度は偏差値57.2だったのがサトウキビ由来の天カリでは68.3まで上昇した。