今年5月にワシントンで開かれたASTDの大会における基調講演には9000人近くの人材開発プロフェッショナルが集結した。その基調講演で、インターネット新聞で急成長しているハフィントンポストのアリアナ・ハフィントン代表は「従来、お金と権力だった成功の定義は、幸福に生きるための健康、知恵、疑問を抱くこと、そして与えることの4つに変わるべきだ」と主張した。欧米流の徹底した成果主義や効率主義ではなく、人の感性や幸せに着目し育成の中にもその概念を見いだしつつある海外企業と、成果主義のカタチばかりをまねして本来持っていた良いものをなくしつつある日本企業のギャップは最近さらに開きつつあると感じる。
日本人が忘れそうになっている大切なものをASTDは探求していこうと情熱を傾けている。経営者は一度この大会に行ってほしい。企業の成長はそこで働く人材と組織のあり方にかかっているのだから、肌で人材育成や組織開発の最前線に触れ、その大切なものを思い起こしていただければ幸いである。
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【プロフィル】浦山昌志
うらやま・まさし 佐世保高専電気工学卒。1978年松下電器産業入社。90年CSK入社。93年米シスコシステムズの認定教育を日本で初めて開始。2003年IPイノベーションズを設立し、代表取締役。08年ASTD(米国人材開発機構)ジャパンの設立を主導し、現日本代表理事・事務局長。56歳。長崎県出身。