一昨年、ASTD(米国人材開発機構)が主催する「ASTD Master Trainer」という実践スタイルの研修を米国で受講した。そのとき世界各地から集まった受講生のインストラクターや研修企画の人たちは「教えすぎない、インストラクションしすぎないことが大切」と口をそろえて主張していた。教育内容の設計から、学ぶ場づくり、研修の実施に至るまでファシリテーションの内容が入り込んでいた印象深い体験だった。
学習者の行動変化を起こすような気づき、動機付けなどが研修中にあれば、知識伝達量が完全でなくても受講後に興味を持って自ら学んだり、行動したりするようになる事例をたくさん見てきた。通常の仕事の現場においても、リーダーが一方的に指示するのではなく、その場にいるメンバーたちと知恵を出し合い、リーダーの「問い」に応える場づくり、協力するチームづくりがとても大切だ。
このような創発的な相互学習が教室の枠を超え、仕事の現場のあちこちで応用されることによって、より創造的な新しい仕事の仕方、商品、サービスが生まれてくる。
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【プロフィル】浦山昌志
うらやま・まさし 佐世保高専電気工学卒。1978年松下電器産業入社。90年CSK入社。93年米シスコシステムズの認定教育を日本で初めて開始。2003年IPイノベーションズを設立し、代表取締役。08年ASTD(米国人材開発機構)ジャパンの設立を主導し、現日本代表理事・事務局長。56歳。長崎県出身。