しかし、研修のときは盛り上がっても、そのうちに前の状態に戻ってしまう。学習者たちは、外側は変わったように見えても心の中は決して変わっていない。ただ、教官が怖いから変わったように振る舞っているか、自分でも気づかないうちに特殊な雰囲気の中でそうしているかのどちらかである。このような訓練は過去の時代には通用したかもしれない。しかし、豊かな創造性を開発する現代の社会ニーズには適さないのではないかと危惧する。
人の行動を最も大きく突き動かすのは、その人の価値観である。研修でいくら、知識・スキルやハウツーを教えても、単に頭で理解しているだけで、価値観に働きかけていない。
つまり、単なる知識伝達の研修では受講者の価値観に大きなインパクトを与え、行動に至らせることはできない。受講者は妙に分かった気持ちになっているだけで、心に何も残っていないのではないかと感じる。本人は腹落ちしたと思っていても、頭でそう感じているだけで、心に大きなインパクトが残っていない。だから、次の日からの行動に変化が起こらないのである。
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【プロフィル】浦山昌志
うらやま・まさし 佐世保高専電気工学卒。1978年松下電器産業入社。90年CSK入社。93年米シスコシステムズの認定教育を日本で初めて開始。2003年IPイノベーションズを設立し、代表取締役。08年ASTD(米国人材開発機構)ジャパンの設立を主導し、現日本代表理事・事務局長。56歳。長崎県出身。