一般に粗暴犯は計画的なものではなく、もののはずみや一時の感情的な爆発によって犯されることが多い。厳罰化は抑止的効果がないというのが刑事政策学の通説だ。
私にはむしろ、犯人に安易に極刑を求めるような命を軽視する文化的土壌が、他人の命を軽視する犯行に連なっているように思える。
死刑廃止が世界の趨勢(すうせい)であるにもかかわらず、日本は国連から勧告を受けても廃止していない。
また、自殺者が3万人前後と高水準であり続けていることからも、日本には命を軽く見る傾向があると思えてならない。
日本文化の柱の一つ「武士道」は桜に似て美しい。しかし、人は命に執着すべきではないという教えを含み、それが太平洋戦争での特攻作戦へとつながった。
非行少年の更生に取り組んでいる少年院教官の大半は、最近の非行少年の変化として、「人に対する思いやりや人の痛みに対する理解力・想像力に欠ける」といった感情・情緒面の問題の増加を指摘している(05年犯罪白書)。
「犯人は当然死刑」という軽々しい書き込みは、これらの傾向と重なるように思われる。
人間の不完全性ゆえに、不可避的に犯罪が生まれる。この社会的な病理現象に対して行為者を切り捨てるだけの冷たい社会にすれば、それを反映して冷たい犯罪が生み出されることになる。