【Science View】

2015.6.11 05:00

杉田有治さん

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  • ≪GENESISに導入しているMidpointcell法の概念図≫Midpointcell法ではシミュレーションの全体空間を小さな領域(ドメインとセル)に分割し、並列計算において粒子の座標などの情報を、ドメイン間で通信する(矢印)。ドメイン間の粒子の移動に周期性も考慮している。
  • 多々良源さん
  • ≪金属中での電場と温度差の効果が同等であるという概念図≫金属中では電場と温度差が電子に対して同じようにはたらくことが期待されている。
  • 理研ベンチャーの認定ロゴ

 ■超並列分子動力学計算ソフト「GENESIS」を開発

 □理化学研究所計算科学研究機 研究部門 粒子系生物物理研究チーム チームリーダー・杉田有治

 コンピューターシミュレーションは、実験、理論に次ぐ第3の解析手法として、幅広い分野で活用されている。特に生命科学では、分子動力学法と呼ばれるシミュレーション技法が、タンパク質の立体構造予測や酵素反応のメカニズムの解明、薬の理論設計などに広く応用されている。

 これまで、分子動力学法を用いたさまざまなシミュレーションソフトが開発されてきたが、多数の演算装置(CPU)を用い、従来の計算アルゴリズムを大規模な分子集団系に対して適用すると、CPU間の通信時間が増大するため限界があった。理化学研究所の研究者を中心とした共同研究チームは、生体分子の運動を1分子レベルから細胞レベルまでの幅広い空間スケールで解析可能なシミュレーションソフト「GENESIS」を開発した。

 スーパーコンピューター「京(けい)」のアーキテクチャー(基本設計)を考慮に入れ、Midpoint cell法など複数の独自計算アルゴリズムを導入し、並列計算を高効率化することで、細胞環境を想定した1億個の原子で構成される系に対しても高速で分子動力学シミュレーションを可能とした。また、従来のようにタンパク質1分子や細胞膜、糖鎖、核酸などの生体分子のシミュレーションも可能であり、今後、創薬研究などに幅広く適用されることが期待できる。GENESISは、オープンソースソフトとして理研粒子系生物物理研究チームのホームページで無償で公開している。

 <理研粒子系生物物理研究チーム ホームページ> http://www.riken.jp/TMS2012/cbp/ja/index.html

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【プロフィル】杉田有治

 すぎた・ゆうじ 1998年京都大学大学院理学研究科博士課程修了、博士(理学)。2007年理化学研究所准主任研究員、12年同主任研究員、10年から同計算科学研究機構チームリーダー、11年から同生命システム研究センターチームリーダーを兼務。

 ◆コメント=新しい手法を開発することで、現在のシミュレーションの限界を超えて、生命科学や創薬応用に貢献したい。

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 ■デバイス内の熱による量子の流れに新理論

 □理化学研究所創発物性科学研究センター スピン物性理論研究チーム チームリーダー・多々良源

 高密度記録素子や演算素子を高速で動作させることができる電子技術の進展で、動画など大きなデータ量をもつ情報の高速処理が可能になった。しかし、これに伴い、動作時に発生する熱の影響は大きくなっている。このため、電子デバイス内の熱輸送現象によって引き起こされる電流やスピン流といった現象を解析し、熱や温度差が生み出す効果を明快に解析できる理論体系の構築が待たれていた。

 理化学研究所の研究者は、温度差によって引き起こされる流れである「熱輸送現象」にみられる温度差と熱を運ぶ熱流の特性を、すでに確立している電子の輸送現象の理論と同様にベクトルポテンシャルと呼ばれる変数で表すことで定式化した。これにより、熱輸送現象を扱う新しい理論体系を構築することに成功した。

 この成果を使えば、従来の熱輸送現象における理論の難解さはなくなり、エレクトロニクスの基盤となっている電子輸送の理論体系と同等に、使いやすく正確な理論体系を熱輸送現象についても実現することができる。また、これまで直感的な期待であった「金属中の電子に対して電場と温度差の効果は同様に働く」という推測を、構築した理論により裏付けた。

 確立した新しい理論に基づけば、マクロからミクロまで幅広い大きさの素子の中で、温度差により引き起こされる電流、熱流、スピン流、また磁石の向きを制御するためのトルクなど、幅広い現象の精密な解析が容易になる。

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【プロフィル】多々良源

 たたら・げん 1992年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。大阪大学大学院理学研究科助手、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ研究員(兼任)、首都大学東京准教授などを経て2012年から現職。

 ◆コメント=熱の輸送に関してエレクトロニクスと同様の記述ができた。さまざまな応用の可能性を探りたい。

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 ■理研の研究成果を社会へ 「理研ベンチャー認定・支援制度」

 理化学研究所は、研究所に集積するさまざまな研究成果を迅速に実用化し、製品やサービスとして普及させ、社会に新しい価値を提供するシステム「理研ベンチャー認定・支援制度」を有している。

 理研ベンチャーとは、理研の研究成果を中核技術として起業し、一定要件を満たすことで理研から認定を受けた企業群。1998年の第1号認定から2015年5月1日までに累計37社を認定してきた。そのうち1社が株式上場しており、また6月16日には理研ベンチャーとして2社目が上場する予定である。

 理研ならではの先端基礎研究をベースに、「画期的な迅速抗体作製技術による抗体医薬の開発」「イヌのアレルギー検査と食物アレルギー療法食対応のドッグフードの開発」「過去を現実と区別無く体験させる実験装置である代替現実システム(SR:Substitutional Reality)の提供」-といったユニークな事業内容を有する企業で構成されている。

 担当者は「企業経営のプロフェッショナルと研究開発のプロフェッショナルが手を組むことで、理研だけでは実現できない研究成果の事業化を推し進めることができる制度。これからも既存の産業における技術革新や新たな産業・雇用を創出し、人類社会の存続に貢献したい」と語る。

 ◆理研ベンチャー認定・支援制度に関する問い合わせ先

 理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部 技術移転企画課

 (電)048・462・5475

  E-mail:t-soudan@riken.jp

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