もう一つ、特許庁へ「無効審判」や「訂正審判」が増加し、企業で事業戦略上の攻防が活発化する可能性がある。無効審判とは登録された特許の無効を特許庁へ訴え出ることだ。企業は事業を阻害するライバル企業の特許を排除するために用いる。訂正審判は、自社の特許が無効審判や裁判所での訴訟でつぶされないようにするため、クレームの減縮などを特許庁へ願い出る手法だ。無効審判や訂正審判によって参入障壁が下がれば、企業は事業進出の好機になるし、企業間で特許ライセンス契約があれば見直さざるを得なくなる。保有特許の少ない中小企業などでは企業価値が無価値になることすらある。
結果、特許庁は審判に追われる可能性が高まる。現状の態勢は審査官が「任期付審査官」500人を含めて約1700人、不服申し立てを処理する審判官は約380人。昨年3月「FA」(1次審査通知までの期間)11カ月を達成し、今後FA10カ月、権利化期間14カ月(従来の半分)にする目標を掲げ、審査官はフル稼働中だ。ある特許庁幹部は「まずは任期付審査官の更新やベテラン審査官の審判官へのシフトなどを考えておく必要がある」と冷静だが、総定員や予算の制約から増員はまず期待できないだけに、今後の対応策が注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)