【高浜3、4号機差し止め】「ゼロリスク」押し付け 最高裁判例を逸脱

2016.3.9 23:45

関西電力高浜原発3号機(手前)と4号機=福井県高浜町

関西電力高浜原発3号機(手前)と4号機=福井県高浜町【拡大】

 今回の大津地裁の決定には「なぜ高浜原発が安全でないか」について明確な根拠が見られない。「関電側の説明が不十分」とするだけで、何が何でも原発の「ゼロリスク」を求めるという自らが設定した安全基準を押し付ける内容で、原発の安全性を判断する基準となってきた最高裁判例を逸脱している。

 原発の安全性は、高度な専門的技術的判断が伴う。原子力規制委員会は、高浜の審査会合を70回以上開き、約2年3カ月かけて関電が提出した約10万ページの申請書を詳細に検討した上で、安全性を判断した。これに対し大津地裁はわずか4回の審尋で、規制委の精緻な議論をほとんど考慮していない。

 これまで司法は、原発をめぐる行政の判断を尊重し、抑制的な立場を維持してきた。それは、四国電力伊方原発(愛媛県)の設置許可処分取り消し請求訴訟をめぐって、平成4年に最高裁が示した「裁判所の審理、判断は行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきだ」との判示に基づいている。

 裁判所が東京電力福島第1原発事故後、原発の運転を禁じたのは3回目。過去2回は福井地裁の同じ裁判長が担当し、いずれも「属人的な判断」との見方がある。実際に一つの裁判結果は同じ地裁で覆った(もう一つは控訴中)。

 事故前を加えても、原発の運転差し止めを求める訴訟や仮処分は、原告側の主張をいったん認めても上級審で覆るなどしており、最終的に差し止めが確定した例はない。伊方の最高裁の基準が踏襲されているからだ。

 運転差し止めは社会的にも経済的にも大きな影響がある。高度な科学技術とリスクとの関係を、規制委の議論に比べ、はるかに短い審尋のみから導き出された判断に委ねてよいものか、大きな疑問がある。(天野健作)

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