
JSTのシンポジウムで「大学技術移転のロールモデル」を説明する後藤吉正理事【拡大】
つまり、企業と真剣につき合えるレベルの人材、組織、規定、契約、情報管理、産学連携や知財マネジメント能力が大学に求められるようになる。例えば、複数の大学や企業が複雑に絡む大型の産学連携案件が出たらどうするか。まさに本格的な交渉と契約が求められ、今まで使っていた契約書のひな型などは通用しなくなる。
さらに最近では、あらゆるものをインターネットでつなぐIoTやAI(人工知能)、超スマート社会の実現を目指すSociety5.0が浸透し始めた。大学でも企業同様にコア領域を設定し、中核技術は秘匿、権利化する一方で他社に公開、ライセンスを行い市場拡大と競争力確保を実現する「オープン・クローズ戦略」で学外と向き合うアプローチが必要とされているほか、大学に蓄積した膨大なデータを新たな“財産”として認識する動きもある。
大学はこれら課題にどう対応し、わが国のイノベーション創出に貢献していくのか、支援機関はいかなる支援をするのか、今後の動きが注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)