【高論卓説】震災地の「記憶」遺構 伝承が新たな地域振興を促す (2/2ページ)

2016.12.5 05:00

 この経験の延長線上に「防災エコタウン」作りが進んでいる。地域の病院や集会所などを対象にして、太陽光発電などを活用してエネルギーの「地産地消」を図ろうという試みだ。小学校の再建にあたって、木造建築を目指すだけではなく周囲に森林地帯を作ろうというプロジェクトも進んでいる。

 仙台市の地下鉄東西線の終点である荒井駅には、2月に開業した「せんだい3.11メモリアル交流館」がある。仙台平野を襲った巨大津波は、この駅がある荒浜地区において沿岸と内陸部と分けるようにして構築されていた、バイパスがせきの役割を果たした。「交流館」には津波が襲って跡形もなくなった、沿岸部の記憶を残そうと手作りのジオラマがある。「鈴木さんの家」「玉ネギ畑」などと手書きの小さな印が立っている。

 荒浜地区は漁業の町でもあった。赤貝やナマコ、ワタリガニの宝庫である。漁師として再び海に向かう人々のインタビューが、大型映像装置から静かに流れていた。

 震災地は「記憶」をとどめながら、新たな地域振興に歩み出している。

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【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。ソフトバンク広報室長などを経て現職。62歳。福島県出身。

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