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■国際交渉を過度に偏重する時代は終わったのか?
COP22がローキー(控えめ)だったことは想定通りであり、特に論評すべきものでもない。しかし、背景には国連気候変動交渉の変化・変質があることを踏まえる必要があるだろう。
パリ協定は、各国が自国で決定した目標(貢献)を提出し、その達成のための努力をすることが根幹となっている。各国が提出した貢献の達成は法的義務ではない。5年ごとに実施される「グローバルストックテイク」で世界全体の進捗を把握し、各国は「貢献」を再提出する。
今後、目標の評価やレビューのやり方などの運用ルールが議論されることになるが、それが策定されれば、後は国家間の交渉に委ねなければならない事項は基本的にはなくなる。以後、各国が自国の提出した目標を達成するためのエネルギー・ミックスをどう実現し、どう改善していくかという国内問題に取り組むことになる。COPは交渉の場ではなくなり、成果報告会、あるいは地方自治体や都市、産業界、NGOなど気候変動問題に関与する主体のマッチングの場となっていくだろう。それを見越してか、各国の古参の交渉官の顔触れも徐々に変わりつつある。
わが国の温暖化目標は、これまで常に国連交渉を強く意識してきた。これは、民主党政権時代の「1990年比で2020年には▲25%」という目標も、パリ協定の下で提出した「2013年度比で30年度には▲26%」という目標も、その前提条件として、全ての主要国の参加による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と、主要排出国がその能力に応じて意欲的に取り組むことを置いていたことからもうかがえる。