【視点】中小企業に開放特許 脱下請け・ブランド創出で生き残り (1/2ページ)

 □産経新聞編集委員・松岡健夫

 独創的な事業アイデアを競うビジネスコンテストはどこも活況だが、中でも大企業や大学などが保有する開放特許の活用を中小企業に呼び掛けるビジネスマッチングに注目している。高い価格競争力をもつ自社ブランドを創り出すことができ、下請け体質から抜け出せるからで、中小企業は生き残り戦略としてぜひ活用してほしい。

 大企業などが人材と資金を惜しみなく投入して生み出した特許のうち、自社で使わなくなったものをライセンス契約など有償で提供するのが開放特許。経営資源が限られる中小企業にとって、有効活用すれば時間や費用をあまりかけずに独自商品という果実を得られる「金のなる木」といえる。

 ただ中小企業といえば、下請けとして持ち前の技能と現場力を生かして大企業の指示通りに生産するのは得意だが、企画力は乏しいため独自商品を開発するのは苦手。開放特許を手に入れただけでは「宝の持ち腐れ」になりかねない。

 そのアイデア創出を学生に求めるのが「埼玉モデル」だ。斬新な発想の持ち主の学生が考案したアイデアを県内の産学官金が連携して支援、中小企業に採用されるレベルまでブラッシュアップ。同時に支援組織のネットワークを生かし、開放特許を使ったアイデアとの親和性が高い事業を展開している中小企業を探し出すというものだ。

 このモデルの生みの親で、現在は特許庁委託事業のプロデューサーを務める鈴木康之氏は「中小企業はブランド創りを考える時間がないので学生アイデアを活用する。しかしユニークなアイデアでも商品化して売れないのでは意味がない。最後(もうける)まで伴走しながら支援するのが埼玉モデル」と説明。成功事例をつくって、独自商品を開発するというチャンレンジ精神を多くの中小企業に波及させ地方創生につなげたいと意気込みを見せる。

 鈴木氏がプロデューサーとして携わってきた特許庁委託事業「地方創生のための事業プロデューサー派遣事業」は2018年度で終了。受け入れ機関として埼玉縣信用金庫が立ち上げた中小企業支援機関「さいしんコラボ産学官」によると、16年度からの3年間で開放特許を活用した新商品開発は11件と目標の10件を超えた。

 そのうちの一つが、タイラ(埼玉県所沢市)が18年8月に発売した「FLAROMA(フラロマ)」だ。17年度の学生アイデアコンテストで埼玉大学の学生が、富士通の開放特許「芳香発散技術」を活用し「香りの記憶で覚えて思い出す」をコンセプトに考案したものを「香る単語帳」として商品化した。

 同社にとって初めてのブランドで、「メイド・イン・タイラを創りたかった。チャレンジのきっかけが訪れた」と喜んだという。埼玉縣信金の橋本義昭理事長は「学生アイデアを生かした中小企業支援は埼玉モデルとして定着した。企業の掘り起こしからマッチング、販路開拓までわれわれが手伝うので、中小企業は開放特許を使ってほしい」と呼びかける。

地域がもうかる仕組みづくりが必要