どれほど深刻? 厚労省の不正統計問題を「超」分かりやすく解説 (3/4ページ)

連日のように厚生労働省の不正統計問題が報じられている(写真提供:ゲッティイメージズ)
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  • もっと深刻な問題が…

 18年以降だけの訂正にとどめた本当の理由は、作業を行った当事者しか知り得ないので、現時点では何とも言えない。04年からすべてのデータを訂正するのは膨大な作業なので、これを回避することだったとも考えられるし、政権に対して忖度した可能性も同様にあり得るといってよい(これに加えて18年から調査対象の事業所を入れ換えたことも、賃金がより上昇したように見える原因となっていた。一部の専門家はこれも忖度であると批判している)。

 これを放置すれば日本は確実に後進国に転落する

 同統計を取りまとめている部署は、参事官付きの「室」となっており、一般的な部署からは独立した存在である。業務に従事する職員の専門性も高く、異動もそれほど多くない。政権への忖度があったと仮定すると、幹部が直接、指示した可能性が高いだろう。

 整理すると厚労省は、(1)ルール上、全数調査すべき調査をサンプル調査に勝手に切り替える、(2)サンプル調査の場合に必要となる補正作業を忘れる、(3)すべてのデータを訂正せず18年からの訂正のみにとどめる、(4)一連の内容を公表しない、という4つの不正を行っている。

 これは先進国の統計としては絶対にあってはならないことであり、非常に深刻な問題といってよい。

 先ほども説明したように、現時点では政権に対する忖度があったのかどうかは不明だが、日本の統計は政権を忖度してデタラメに集計されていると海外から批判されたとしても、反論できない状況である。

 世間では政権への忖度の有無が重視されているようだが、現実の問題はもっと深刻である。

劣化が国家の基幹にまで