いろいろな食材を少しずつ…肥満も予防 「和食」で腸内細菌のバランス維持

 

 人間の腸内にいる多様な細菌のバランスを保つことが、健康維持に重要な役割を果たすことが知られている。そうした中、いろいろな食材を少しずつ食べる和食のスタイルが、腸内細菌のバランス維持に寄与していることが最近の研究で分かった。専門家は「和食を多く取り入れると、肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防・改善に効果が期待できる」と話している。(山本雅人)

 臓器の負荷軽減

 東北大大学院農学研究科の都築毅准教授は、食事を取った際、体の中で食材ごとに消化・吸収のために働く部分や経路が異なるメカニズムに着目した研究を行った。その結果、少量ずつ多種類の食材を取ると、異なる消化・吸収機構で処理され、特定の臓器への負担が減少することを突き止めた。

 いろいろな食材を少しずつ取るには、サバのみそ煮、五目豆、ハクサイとワカメのすまし汁にご飯といった伝統的な和食のメニューが理想という。

 都築准教授は新著「昭和50年の食事で、その腹は引っ込む」(講談社)の中で、こうしたメニューはかつて、日本の多くの家庭で日常的に食卓に上っていたことを紹介している。

 「伝統的な和食は、消化・吸収機構にとって大きなメリットがあるだけではない。特定の栄養素に偏らず、脂肪の取り過ぎも防げる」と都築准教授。高脂肪食が主な原因となっているメタボや糖尿病など生活習慣病の予防が期待できるという。

 共生関係を維持

 腸内細菌と病気の関係に詳しい慶応大医学部微生物学・免疫学教室の本田賢也教授も「細菌によって餌となる栄養素が違うのだから、多種類の食材を摂取するのがよい」と指摘する。

 本田教授によると、腸内には1千種類、100兆もの細菌がいる。重さ1キロにも上り、総称して腸内細菌叢(そう)と呼ばれる。

 「腸内細菌叢の共生関係のバランスを保つことが大切。しかし、種類の少ないおかずや同じメニューの食事ばかりを続けると、特定の細菌にだけ餌が与えられることになり、バランスが崩れてしまう」。そうなると、肥満やメタボのほか、アレルギーなどの免疫疾患につながることもあるという。

 腸内の細菌の中でも“悪玉菌”に対しては餌を与えず減らした方がいいようにも思える。しかし、「単独では悪玉に見えても、周囲の菌との共生によって善玉の働きをしていることもある。多種類の菌を保つことが何より重要」という。

 多種類の菌に効率的に餌を行き渡らせることができる和食。それに対し、欧米型の高脂肪食は「肥満を起こす細菌が増えていく」。

 忙しい現代人が「いろいろなものを少しずつ」という食事を取るのはなかなか難しい。都築准教授は「牛丼ならば大盛りをやめてその分、卵やサラダを注文するとよい。ラーメンならトッピングの種類を増やす方法がある」と外食時のメニューの選び方をアドバイスしている。

 ■新たな細菌の働きに注目

 腸内細菌の働きに着目した研究は世界でも注目されている。食べ過ぎや運動不足だけでなく、腸内細菌が肥満の原因となることを突き止めたのは、米ワシントン大のジェフリー・ゴードン博士らの研究だ。米科学誌サイエンスに論文が掲載された。

 産経新聞は昨年5月、「肥満 第3の要因に『腸内細菌の変化』」の見出しで詳報。今年に入り、テレビ番組でも「驚異の細菌パワー」などと紹介された。