光トポグラフィー検査で鬱診断 問診を補完する客観的データ

ストレス社会で働く(2)
モニターを見ながら光トポグラフィー検査を受ける男性=東京都新宿区西新宿の新宿ストレスクリニック

 従業員自身がメンタルヘルス状態を把握し、休職、退職、自殺などを未然に防ぐ「ストレスチェック制度」が昨年12月から始まった。職場改善が期待される一方、精神科を専門とする産業医の不足など課題も指摘されている中、実際にメンタルヘルスの不調を自覚している従業員は正しい面接指導が受けられるのかという不安もあるだろう。

 「精神科医で産業医の資格を持っている先生は1千人ぐらいしかいないだろう。心療内科の先生を加えたら倍くらいにはなるが、それでも足りない」。メンタルヘルス対策を含めた従業員支援(EAP)サービスを提供するフィスメック(東京都千代田区)出版事業部の白崎哲史氏が指摘する。

 専門の産業医の不足を補うために厚生労働省は、あらかじめ決められた質問によって行う構造化面接と呼ばれるフォーマットを用意したという。その流れに従って進めれば、精神科の専門医でなくても医学的な検証できるとされるが、心許ない印象はぬぐえない。

 白崎氏は「ストレスチェック後の構造化面接は、病気であるかどうかを診るというよりは、現在の状態で働くことは可能なのか、それとも就業上の措置が必要かどうかというレベルをチェックするものです。もちろん、そこでは鬱病が想定されていますが、鬱病かどうかを診断するわけではないのです」と制度の目的を説明する。

 ストレスチェック制度で会社が面倒を診てくれるのは面接指導まで。高ストレス者と判断されても、専門医の治療を受けるのかどうかは本人にゆだねられる。

 ストレスチェックの結果を補完する客観的データになるのが、近赤外線を用いて大脳の毛細血管を測定する光トポグラフィー検査だ。昨年11月に鬱病と診断された映像製作会社に勤める30代の男性社員が新宿ストレスクリニック(東京都新宿区)の協力を得て検査を受けた。

 男性は心理士による1時間近くに及ぶ問診を受けた後に検査室に入った。軽く頭皮に接触して血流を計る端子がいくつも付いたヘッドギアを装着し、モニターの前に座る。特定の50音で始まる言葉、例えば「い」で始まる言葉を尋ねられ、「石」「岩」などと答えていき、検査は3分間ほどで終了する。

 しばらくすると診察室に呼ばれ、結果を聞いた。血流をグラフ化した波形によって健常者、鬱病、双極性II型障害(躁鬱病)、統合失調症を判別するが、男性は昨年11月に受けた診断の通り、鬱病と診断された。

 「石」「岩」などと言葉を考えたときにモードが切り替わり、活発化した脳に新たな血液が送り込まれるのだが、グラフを見ると、男性の波形は健常者と比べてピークが半分以下と山が小さかった。

 同クリニックの川口佑院長はグラフを指し示しながら「側頭部は山がきれいに出てますので、生活のレベルをそこまで落としているとは思いませんが、鬱病の波形パターンが出ていますね」と告げた。鬱病との診断結果にも男性の表情にはとくに変化はなかった。

 記者も鬱症状と診断された後に光トポグラフィー検査を受けた経験があり、その際に新型鬱とも呼ばれる双極性II型障害との診断を受け、とても驚いた記憶がある。結果を知らされたときの反応の違いに鬱病と新型鬱が異なることを実感した。

 とくに反応を示すことなく淡々と医師の説明を聞いていた男性だったが、大きな決断を下した。TMS(経頭蓋磁気刺激)治療を受けることを決めたのだ。昨年11月に鬱病の診断を受けてから、投薬に頼らずに治療してきた自らの希望に合致したことも理由のひとつという。

 次回は磁気刺激で脳を活性化するというTMS治療の現場をリポートする。