「逆打ち」でご利益3倍!? “お遍路さん”60年に一度のチャンス逃すな
四国八十八カ所の霊場を巡る“お遍路さん”が旅行会社などの注目を集めている。なぜなら今年はうるう年で、88番札所から1番へと逆に巡る「逆打ち」で弘法大師・空海のご利益が3倍になるとの言い伝えがあるからだ。うるう年の巡礼者は通年の数倍に上るともいわれる。しかも逆打ちで弘法大師に巡り会えたという伝説が残る60年に一度の丙申(ひのえさる)にもあたり、旅行各社は需要増を見越してプランを投入し、地元ホテルは商機に期待を高めている。(田村慶子)
「お遍路を始める人の多くが定年退職や子育てを終えた中高年者です」
阪急交通社広報担当の明石純子さんは、こう説明する。「お遍路は晩年の人生をより良いものにする終活の場でもある」という。
功徳を求める巡礼者にとって今年は特別な年だ。うるう年は88番札所の大窪寺(香川県さぬき市)から逆に巡る「逆打ち」により、ご利益が3倍になるといわれる。それだけでなく、丙申の年に逆打ちで弘法大師に巡り会えたとの言い伝えもあり、「丙申の今年は60年に一度の好機」と明石さんは話す。
このため予約が増えると見込んだ旅行各社がプランを拡充させている。本来、巡礼の期間は自由だが、大きなご利益を得るには今年1年間で全札所を巡る必要があり、日程を何度かに分けての大規模なツアーが増える期待が高まっているのだ。
阪急交通社は、関西圏の発着地を昨年の20カ所から33カ所に増やし、大阪発や兵庫発など6ルートを新設した。現地ではタクシーやバスを使った巡礼が大半を占めるが、今年2月にはあえて歩き遍路を売りに各所の観光地も巡るプランを投入。4年前のうるう年は取り扱い人数で前年の8割増と好調で、今年も5割増を見込んでいる。
JTB西日本は、巡礼回数を前年の全11回から今年は全4回に減らし、1回分の行程を長くする代わりに何度も出かける負担感を抑えたツアーを発売した。設定期間内であれば、自由に日程を組めるプランなどで、仕事を持つ現役世代の取り込みも図る。
また、クラブツーリズムは16コースと、前回のうるう年である平成24年より商品のバリエーションを倍増し、関西出発のコースを新設した。今年3月の予約人数は2月23日時点で4年前の4割増だ。同社広報担当者の青木之(ゆき)さんは「前回のうるう年や通年に一度お遍路をしたリピーター客が多く、春や秋の需要増が見込めそう」と手ごたえを感じている。
一方、四国の地元ホテルでは春の需要期を控え、宿泊予約が入り始めている。
大和ハウスグループのダイワロイネットホテル高松(香川県高松市)は昨年10月頃から段階的に宿泊プランを投入。3月には予約が入り始めた。
巡礼衣装のオリジナル白衣を付けたプランは80着分がほぼ完売で、今年の年間客室稼働率は昨年の3~4ポイント増で9割超を見込む。
リーガロイヤルホテル新居浜(愛媛県新居浜市)でもお遍路が目的とみられる団体客の予約が好調な滑り出しだ。2月23日時点で3月の客室稼働率は前年の10ポイント増となる9割超で推移。同ホテル企画室の加藤泰子チーム長は「お遍路では一般観光客と違い、朝夕の2食付きを利用する宿泊客が多く、客室単価のアップも狙える」と話す。
弘法大師・空海が修行を重ね、万人を救う霊場を約1200年前に開いた足跡を弟子の修行僧がたどったのが四国遍路の始まりといわれる。
現在は定年後の第2の人生のワンシーンとしてお遍路を始める一般客が増え、定かではないが、遍路人口は年間数十万人といわれている。亡くなった夫の供養に訪れる女性や、リタイア後の社会とのつながりを求める高齢夫婦らも多い。近年はタレントや著名人がお遍路を始めたことが話題となったことから、若いカップルや外国人旅行客にも広がっており、新たな旅行需要として関連業界の商機につながっている。
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