“官製賃上げ”に息切れ感 政労使、思惑の違い浮き彫り
16日に大手企業の集中回答日を迎えた2016年春闘。ベースアップ(ベア)などの賃上げで経済の好循環を促し、デフレ脱却を加速させることは政府、労働界、経済界の共通した目標だ。だが、大手企業が回答したベアの水準はおおむね昨年実績の半分程度。安倍晋三政権が賃上げを労使に呼び掛け、過去2年は大幅賃上げを達成した“官製春闘”に息切れ感が漂い、政労使それぞれの思惑の違いも浮き彫りになってきた。
「2度あることは3度ある。過去2年の大幅賃上げの流れを進めてほしい」
13日開催の自民党大会に出席した経団連の榊原定征会長を意識して安倍首相はこう呼び掛けた。首相は官民会議などの場も含め、榊原会長に3月だけで3度目も要請する異例の対応で賃上げを迫った。
昨年末の官民会議で、榊原氏は「年収ベースでの賃上げを期待したい」と、政府の要請に応じた。しかし、実際の春闘交渉が始まると、経済の先行き不透明感から、恒常的なコスト増につながるベアに対し、経営側の慎重姿勢は強まっていった。
賃上げの消費押し上げ効果は一時金よりもベアの場合の方が大きいとされる。安倍政権が賃上げ要請で念頭に置いたのはベアの実施だが、榊原氏は「ベアにこだわらない年収ベースでの賃上げ」とかわし、政府との間に賃上げへの温度差をみせた。
中国経済の減速と金融市場の混乱に日銀によるマイナス金利政策の導入が追い打ちをかけ、三井住友銀行などのメガバンク3行の労組がベア見送り方針を決めると、金融業界には「ベアこだわらず」の空気が一気に広がった。「マイナス金利という不測の事態が引き金だが春闘交渉に入った中で時期が悪すぎる」と、経団連の首脳が苦虫をかんだメガバンクの対応に、賃上げ機運はそがれた。
一方、連合は中小企業の賃上げを優先させる「底上げ春闘」を掲げた。16日の回答で、ベアなどで格差が当たり前だったトヨタ自動車と取引部品メーカー数社が同額のベアを実施することについて、連合の神津里季生会長は「底上げの象徴」と強調した。
しかし、底上げに不可欠な中小企業の収益力を増やす方策にしても、中小企業では労組組織率が数%以下。連合の働きかけが効果を出せないのは明白で、準備不足は否定できない。ここ数年、連合の影響力低下が指摘されるが、これを防ぐことができるかは、今後6月まで続く中小企業での交渉で賃上げを獲得できるかにかかっている。
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