「おいしくない」と苦情…有田みかんの偽装横行? 不正利用される段ボール箱
ミカンの生産量が全国一の和歌山県。中でも県中部の有田地域内で収穫される「有田みかん」は、温州ミカンの全国トップブランドだ。しかし「JAありだ」によると、毎年「おいしくなかった」などというクレームが寄せられている。実は「有田みかん」と記された段ボール箱を不正利用して中身が違っていたり、生産地がはっきりしないミカンを「有田みかん」としてインターネットで格安販売したりするなど、「偽装販売」が懸念されているのだ。しかし、加工品ではないため偽装かどうかを証明するのは難しく、ブランドを守ろうとJA関係者は対策に頭を悩ませている。(福井亜加梨)
クレーム相次ぐ
JAありだ販売企画課によると、消費者から「有田みかんを買ったがおいしくなかった」との苦情や問い合わせの電話は、毎年寄せられている。今シーズンは10件近く届き、中には偽装が疑われるケースもあったが、販売会社を突き止めることなどはできなかったという。
また、昨年12月中旬、「箱買いしたが、多くが腐っている」との電話があった。同課が段ボール箱を調べたところ、9月下旬~10月上旬に出荷されたはずの有田みかんの人気品種「ゆら早生」の段ボール箱で売られていたことがわかった。
本来ならありえない品種の箱と販売時期の組み合わせに、同課の担当者は「中身を詰め替えて売られていた可能性が高い」と指摘する。
一昨年には、「インターネットで買ったが、おいしくない」との問い合わせもあった。この消費者は、通常4千円ほどで売られる10キロの有田みかんを、約900円の“格安販売”で購入していた。販売会社を調査したところ、所在地は和歌山市の存在しない住所地になっていて、電話にも誰も出なかったという。
「1件ずつ追跡しているが、突き止めるまでには至らず、いたちごっこの現状。有田みかん1つずつにブランドの刻印をするわけにもいかないし…」。同課の担当者は肩を落とす。
ブランドを利用?
有田みかんのブランドは、JAありだが特許庁の「地域団体商標(地域ブランド)」に申請し、平成18年11月に登録が認められた。
つまり、生産農家として認められた有田地域の農家だけが使える商標で、販売用の段ボール箱には「第5002567号」という商標番号が記されている。これは、ロゴマークなどに付けられる一般的な商標とは異なり、青果物であるミカンそのものに対する権利だという。
JAでは、昨年12月中旬に和歌山市内のホームセンターで有田みかんの段ボール箱が販売されているのを確認した。有田地域から北へ車で約40分、直線距離で約25キロ以上も離れた場所だ。
店には、「有田みかん」とともに「和歌山みかん」の段ボール箱も平積みされていた。それぞれ5キロ用と10キロ用があり、商標番号は入っていなかったが、最高の品質を意味する「秀」の字が記され、和歌山みかんの箱よりも有田みかんの箱が3~4割ほど高価格だった。
和歌市内で獲れたミカンは有田みかんとは呼べない。それにも関わらず、段ボール箱が同市内で販売されていたことを受け、JAが「悪用される可能性がある」と店に問い合わせたところ、すぐに売り場から撤去されたという。
同店によると、有田みかんの段ボール箱は約10枚売れたが、大量購入を希望する客はいなかった。客に使用用途を尋ねたり、有田みかんの生産農家かどうか確認したりしたことはなかったという。
和歌山市内でも需要があるかもしれないとして販売したといい、男性店長は「有田みかんがブランド化されていることについて、勉強不足だったことを申し訳なく思う」と話した。
ブランドイメージ守れるか
商標が不正利用されるのを防ごうと、JAの直売所では、使用済みの段ボール箱を処分する際、箱に×印を付けるなど、取り扱いに注意を払っている。
一方、有田地域では、「有田みかん」と記されているものの、商標番号が入っていない段ボール箱がホームセンターや通販で簡単に手に入る。地域の農家から「親戚(しんせき)や知人に届けるのに使いたい」などという声が強いためだ。
JAは今後、「有田みかん」と記された段ボール箱が販売される場合、店側に購入者が有田みかんの生産農家かどうかを確認してもらうなど、協力をを求めていく方針という。同課の担当者は「抑止につながる対策を少しずつでも講じていきたい」と話している。
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