地震保険、住宅ローン残る人は検討を 加入の必要性高い「3つのケース」
熊本県や大分県で大きな被害を出した熊本地震で、地震保険が改めて注目されている。相次ぐ改定で保険料が値上げされるなど、消費者に不利な印象もあるが、住宅ローンが多く残っている場合などには検討する価値がありそうだ。特徴や加入の必要性が高いケースなどを専門家に聞いた。(戸谷真美)
加入率は3割以下
日本損害保険協会のまとめによると、熊本地震を受け、4月21日時点で熊本県や大分県など九州各県を中心に、6万8千件以上の調査依頼や問い合わせが寄せられた。
地震保険の世帯加入率(平成26年度)は、熊本県で28・5%、全国平均も28・8%にとどまる。総合情報サイト「オールアバウト」の損害保険ガイドでファイナンシャルプランナーの平野敦之さんは「多くの家屋が被害を受ける地震という災害の特性上、地震保険は補償内容に制限がある。また、特に賃貸住宅に住む人は、持ち家の人とニーズが異なるため、全体としての加入率が低くなってしまうのでは」と分析する。
来年1月に改定
地震保険の主な特徴を改めておさらいすると、(1)地震や噴火、津波による建物や家財の損害を補償(2)単独では加入できず、火災保険とセットで契約(3)契約できる保険金額は火災保険の30~50%で設定。建物5千万円、家財1千万円の上限がある-の3つが挙げられる。
また、政府と損保各社が共同で運営する公共性の高い保険であり、どこの損保会社でも保険料は変わらない。ただ、地震発生の度合いや建物の構造などを踏まえ、都道府県により保険料が異なる。
現行の保険料や危険度に応じた等地区分は26年7月から適用されており、それ以前に比べて保険料は全国平均で15・5%上がった。また、損害保険料率算出機構が将来的な地震発生による損害の危険度が増したと判断したため、来年1月から3段階に分けて実施される改定で、最終的にさらに同19%値上げされる。新たな保険料率や区分は加入する損保会社などで確認できる。
平野さんによると、地震保険の必要性が高いのは、(1)住宅ローンの残債が多い(2)預貯金などの資産が少ない(3)被災した場合に収入が途絶える可能性が高い-の3つのどれかに当てはまるケースだ。地震で住宅が全壊しても住宅ローンは免除されないが、地震保険をローン返済に充てることができる。また、自営業で自宅兼店舗の場合など、被災すると職場も失う可能性が高い人も検討の価値がある。
片付け前に写真を
熊本地震で日本損保協会は、保険金の支払いを早めるため、損害状況の調査について、一部で加入者の自己申告を認める特別措置を取った。
地震保険に加入していて被災した場合、平野さんは自宅の家財などを片付ける前に写真を撮影しておくことを勧める。携帯電話やスマートフォンのカメラでもかまわない。自身が加入している損保会社が分からないときは、同協会が設置する自然災害損保契約照会センター((電)0570・001830、通話料有料)に電話で問い合わせると照会してくれる。保険金の申請手続きはある程度落ち着いてからでも大丈夫だ。
被災者生活再建支援制度により、自宅などが全壊した場合、再建に最大300万円の支援金が給付される。また、融資を含めた公的支援も利用できる。
平野さんは「基本的な備えとしては、『公的な支援制度+地震保険』。それでも不足するようなら少額短期保険(ミニ保険)の地震保険などで上乗せできる。家計が許す範囲でこれらを検討してみては」と話している。
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