「セックスレス=夫婦の危機」という風潮 欧州100回、日本45回…

 
地下鉄の駅で熱いキスを交わすカップル(ロイター)

【オトナの外来】

 中高年に限らず、日本の夫婦は性生活で悩んでいるらしい? どうも欧米の影響を受けて「性生活がない=夫婦生活の破たん」と考えている風潮がある。この風潮を受けてマスコミでも「セックスレス=夫婦の危機」的な報道が多い。

 もっともその番組を作っているマスコミ関係者自身も「我が家も数年前から全くない」なんて話は多い。そんなスタッフが作る番組には少し無理があるような気がする。

 私もバイアグラが発売された当初は「日本人の性生活を充実させよう!」的なキャンペーンに乗ってしまったが、それは正しいことだったのだろうか? あまりにも欧米のスタンダードを無節操に受け入れてしまったのかもしれない。

 いつも取りあげられる有名なデータは性生活の国際比較である。

 2005年の避妊具の大手メーカーDurex社の調査ではギリシャ人の性生活の回数が1位で年間138回、続いてフランスなどの欧州が概ね年間100回くらいである。アジアは総じて少なく、年間80回ぐらいであるが、中でも少ないのが日本の45回である。実はもっと少なく、25回ほどという日本の調査もある。

 同様に性生活の満足度も低いようだ。家族計画研究センターの『男女の生活と意識に関する調査』でも既婚者のセックスレス(1カ月以上なし)が年々増加し、半数に近づいてきている。「面倒くさい」とか「仕事が忙しい」というのが理由らしい。

 年齢が上がった60歳以上のセックスレスは5割以上になる。しかし、最近は定年後の男性が再び精力を盛り返しているという。団塊世代が現役の時に読んでいた男性週刊誌では購読層の高齢化とともに「死ぬまでセックス」のような記事を毎週載せ始めたのもその兆候だ。

 高齢になると性機能が衰えるのは自然の成り行きだが、健康な日本人には性機能の難敵、動脈硬化・糖尿病などの病気に伴う器質性勃起不全はあまり多くない。

 40歳以降に性機能が衰える原因の多くは仕事や家族のストレスからの心因性勃起不全である。仕事のストレスがなくなった定年後に急に性機能が回復する例があっても不思議ではない。問題はお相手である。40歳くらいから疎遠になった妻に求めても拒絶され、風俗に通う高齢者も多いらしい。それがばれて熟年離婚の危機になる場合もある。

 ゆとりを取りすぎるとたちまち経済が立ち行かなくなる資源の少ない日本で、欧米のような夫婦生活やセックスライフを求めても難しいかもしれない。

 中高年夫婦の約半数がセックスレスであるならば、それは日本の標準かもしれない。回数を増やすだけでは解決できない深い問題があるのだろう。

 その一つは夫婦のコミュニケーションのようだ。セックスは究極のコミュニケーションと言われている。定年後に性機能が回復したといって、いきなり妻に求めるのはいかがなものか?

 女性に必要なのは夫婦の会話である。中高年女性の不満の多くは「夫が話を聞いてくれない」である。忙しすぎた現役時代を反省し、支えてくれた妻に感謝すれば妻もいろいろと話してくれるだろう。そんな時に「面倒くさい」「つまらない」と自室にこもってしまってはコミュニケーションどころではなく、熟年離婚も現実化する。

 家事などを覚えて自立すると、妻との会話は弾むようだ。実際、私が講師で呼ばれる「男の料理教室」に参加している定年を迎えた男性からは妻との会話が増えたと聞く。

 中高年夫婦の性生活の復活にはまず“自立・会話・ふれあい”からと肝に銘じたほうが良いだろう。