広がる子供向けプログラミング教材 教育必修化、文科省方針も追い風に

 
プログラミングできるブロックで先駆的なレゴも出展

 子供たちにプログラミング教育を。そんな国の方針もあって、さまざまな試みが教育の現場で取り入れられようとしている。教育に関連したIT製品やサービスが集まった展示会でも、子供のプログラミング教育に役立ちそうな教材やスクールが幾つも紹介されていた。ディー・エヌ・エー(東京都渋谷区)取締役会長の南場智子氏も講演を行って、「コンピューターに指示を出せる人材をどれだけ輩出できるかが、その国の競争力に直結する」と指摘。コンピューターを使えるだけではなく、プログラミングできる人材を早くから育てる必要性を訴えていた。

 動物の顔や、上下左右を指した矢印が描かれたブロックがある。子供が自由な組み合わせでブロックをつなげて遊んでから、タブレットの画面上に出てくるブロックを同じ絵柄で並べると、画面の中のキャラクターが動き出す。カメがいれば遅く動き、右を向いた矢印があればそちらに向かう。

 ワイズインテグレーション(東京都千代田区)が今夏に投入を予定しているプログラミング体験プロジェクト「ソビーゴ」のひとつで、5才からを対象にした「ソビーゴ BP1」という教材。実物のブロックを手に取りつなげる行為を入れて挟むことで、子供たちが個々の絵柄が持つ意味を考え、どうつなげればどう動くかを強く理解するようになる。

 8才からの「ソビーゴ RP1」という教材もあって、こちらはロボットの腕を動かしたり、ロボットを走らせたりするプログラミングを学べる。ロボットの外観は、子供たちがそれぞれに段ボールから切り取ったパーツを貼り合わせて作る。自分ならではのロボットができるため、愛着が湧き、競争意識も生まれてプログラミングに対する思いが深まるという。

 5月18日から20日まで、東京ビッグサイトで開催された第7回教育ITソリューションEXPOでは、「みらいの学びゾーン 学びNEXT」というコーナーが作られ、教育現場でのプログラミング教育に役立つ教材やスクールなどが展示・紹介されていた。

 各種スクールを運営しているヒューマンアカデミー(東京都新宿区)では、ロボットクリエイターの高橋智隆氏をアドバイザーに迎えて運営している「ロボット教室」や、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏が監修する「ロボティクス プロフェッサーコース」を見せていた。

 低年齢向けの「ロボット教室」では主に、ロボットが動く機械的な仕組みを学ぶ。「ロボティクス プロフェッサーコース」に進んでからは、センサーやモーターを制御してロボットをどう動かすかを学ぶ。両コースを経ることで、自分が望む動きをするロボットを作り上げる知識が得られそうだ。

 スクール関係では、学研エデュケーショナル(東京都品川区)も、ブロックを組み立てるとロボットになる「Artecブロック」を提供しているアーテック(大阪府八尾市)の製品を使ったプログラミング教室を展開中。「Artecブロック」はソニーグ・ローバルエデュケーション(東京都港区)でも活用して、子供向けのプログラミング学習キット「KOOV」の開発を進めている。独自の半透明カラーに彩られたブロックを組み合わせ、手をかざすと口を閉じるワニや、手の動きを察知して音を出す楽器などを作り出せる。

 子供たちのお稽古ごとと言えば、昔は習字やそろばん、ピアノといったものが中心だった。今はそこにロボット作りやプログラミングといったジャンルが登場して来た形。2020年の小学校でのプログラミング教育必修化という文部科学省の方針も追い風となって、学校内外で広がっていきそうだ。

 早い時期からのプログラミング教育がどうして必要なのか。そのことについて、「『間違えない達人』から『うねりを作る人材』へ ~子どもたちにプログラミング教育を~」というタイトルで触れたのが、ディー・エヌ・エー会長の南場智子氏だ。AI(人工知能)の発達やロボット技術の進歩で人の働き方が大きく変わり、「コンピューターに使われる人材、コンピューターと競争する人材、コンピューターにコマンドを出す人材」が生まれてくる。ここで「コンピューターに指示を出せる人材を、どれだけ輩出できるかが、その国の競争力に直結する」と南場氏は訴える。

 以前からデジタルデバイドという言葉で、コンピューターが使える人と、使えない人との間に生まれる格差が問題になっていたが、今は使えて当たり前。「ITを使うだけでなく、作れる人になっていく」。それによって収入も仕事の範囲も大きく変わってくる。「創造する力。プログラミングというツールを使い、新しい価値を生み出す力。それらを養っていくことで、どこに言ってもコラボレーションが出来るようになる」。日本にとどまらず、世界という舞台で自分を発揮できる人材を育てる意味でも、プログラミング教育は重要と言える。

 「コンピューターやITは、子供を危険にさらすものではない。未来への扉を開くもの。その素養を教えるプログラミング教育を普及させることが、私たちDeNAグループの夢のひとつだ」と南場氏。実践として、佐賀県武雄市と組んで、小学校を舞台にしたプログラミング授業を展開している。最初は何も知らなかった子供が、簡単なゲームを作り、映像の見せ方にも工夫をこらすようになっていく。「先生が、給食の後は寝てしまうような子供でも、夢中になっていたと話していた」。終了後の調査では、ほとんどの児童や先生が、もっとやってみたいと言っていたという。

 「コーディング、他校や他国との連携作業、物を動かすプログラミングを組むのが次のステップ」。そうやって育まれた知識とコミュニケーション能力を駆使して、グローバルに活躍できる人材が増えていく。個人として、そして国として将来にわたって潤っていく意味からも、プログラミング教育の重要性に、もっと関心を向ける必要がありそうだ。