資産価値だけで住まいを選ぶと必ず後悔する あなたは購入派?賃貸派?
提供:PRESIDENT Online「郊外不利」でもない「二極化」の実態
「空き家問題」が深刻化している。総務省によると2013年現在、全国で820万戸、実に総住宅数の13.5%が「空き家」になっている。理由は「家余り」だ。1968年に総住宅数が総世帯数を上回って以降、その差は拡大しており、今後も空き家は増え続けると見られている。
ところが新築マンションの価格は上がっている。東京カンテイによると、14年の首都圏の平均価格(70平方メートル換算)は5157万円で、10年前に比べて27%(約1100万円)も高い。なかでも湾岸エリアは上昇が著しく、40%(約1700万円)も値上がりしている(図1)。
よく「2020年の東京五輪までは湾岸エリアの値上がりが続くのではないか」という質問を受けるが、すでに相場が高くなっている事実を踏まえれば、さらに高く売れるかといえば難しいだろう。
低金利や住宅ローン減税など、いま住宅の購入環境は絶好だ。焦る気持ちもわかるが、市場では条件のいい物件しか売れないという「二極化」が強まっている。
「全体的に値上がり傾向にあるから」という物件選びは危険だ。
二極化の実態も「都心が有利で、郊外が不利」といった単純な構図ではない。郊外であっても駅前再開発が成功した場所は人気が高い。一方、都心でも住環境が悪い場所は敬遠される。ピンポイントで評価が分かれる「まだら模様」の二極化なのだ。
変化を捉えるうえでは、リクルートの「穴場だと思う駅」という調査が興味深い(図2)。いわゆる「住みたい街」とはかなり顔ぶれが違うが、地域の実態を反映している。
「穴場1位」の北千住は、駅周辺の再開発や大学校舎の新設などで昼間人口が増加している。北千住に加えて三ノ輪、入谷、南千住の4駅を「千住エリア」として新築価格を調べてみると、首都圏平均に比べてこの2~3年の値上がりがゆるやかで、上昇余地がある。
こういった駅前再開発や新駅の開業、路線の延伸などは街が活性化する契機となり、周辺の物件価格にもいい影響が出やすい。
また駅の重要度が高まるにつれて、「駅徒歩」の影響も大きくなっている。(図3)を見ると、徒歩10分以内の物件は資産価値を維持しやすいのに対し、徒歩10分を超えると遠くなるほど価格が下がることがわかる。
子育て世代など一戸建ての購入を考える読者もいるだろう。資産価値を考えると、駅徒歩だけでなく、住環境のよさや通学路の安全性などもチェックしておきたい。もちろん住宅は資産価値だけで選ぶものではない。家族での住まい方をよく考えたうえで、物件を選んでほしい。
多くの賃貸物件は住宅性能が今ひとつ
一方、購入ではなく賃貸の場合も考えてみよう。賃貸の最大のメリットは住み替えのしやすさだ。
家族の増減や収入の変化に応じて、住まいを自由に替えられる。ただし「一生賃貸」という場合は計画的に老後資金を貯蓄しておく必要がある。
そもそもファミリー向けの賃貸物件は絶対数が少ない。アットホームによると首都圏の賃貸マンション(2014年)では50平方メートル以下が78.5%で、70平方メートル以上の物件は3.8%しかない。住宅性能の違いにも注意が必要だ。
一般的には永住型の分譲物件は性能が高く、住み替え型の賃貸物件は賃料回収が第一で、性能は法規定レベルという傾向が強い。
性能や広さも十分な「分譲マンション」を借りる手もあるが、賃料は高い。70平方メートルの平均賃料は首都圏平均で約18万円。同じ支払額で30年・金利1.5%の住宅ローンを組むと約5210万円を借りられる。30年後、購入なら物件が手元に残るが、賃貸はさらに家賃が必要だ。
資産価値だけで住宅を選ぶと必ず後悔する。大事なことは居住の満足度だ。ただし将来に備えて売却のしやすさも観点に加えてほしい。
住宅ジャーナリスト 山本久美子 早稲田大学卒業後、ベネッセコーポレーションを経てリクルートに入社。「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。2004年に独立。宅地建物取引主任者、マンション管理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。
(住宅ジャーナリスト 山本久美子 星野貴彦(プレジデント編集部)=文)
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