越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)(2)“呑み鉄”改め“撮り鉄”モードで全力ダッシュ!

江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画
私の座席は3号車。大きな窓に映る新潟の美しい風景もこの路線の魅力のひとつ

 酒呑みならおわかりいただけるかと思うが、初めて訪れた酒場で、自分好みのビールが用意されていて冷え具合や注ぎ方がよいと、その後への期待がぐっと膨らむものだ。

 さて、酒呑みのための極楽列車『越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)』が直江津駅を出発したのは定刻ちょうどの午前10時18分。しつこく繰り返すが「GENBI SHINKANSEN/現美新幹線」でビールやワインを見送った私は、「利き酒コーナー」の品書きをためつすがめつしながら、それでもまだ自制心を保っていた。2号車のサービスカウンター「蔵守~Kuramori~」のショーケースに並んでいるのは、厳選された新潟県内の地酒5銘柄。そのラインナップは、十日町市「松乃井酒造場」の「凌駕 純米大吟醸」300円、加茂市「雪椿酒造」の「越乃雪椿 純米吟醸 越端麗」200円、新潟市「石本酒造」の「越乃寒梅 白ラベル」100円、上越市「頸城酒造」の「越路乃紅梅 純米吟醸」200円、糸魚川市「田原酒造」の「雪鶴 純米吟醸」200円。ほかに四合瓶も何種類か用意されている。

 「蔵守」には酒を求める乗客がわらわらと群がり、2号車は早くもほろ酔いの楽しげな雰囲気に満たされた。けれども私は心に固く誓っていた。午前10時50分が酒を解禁する時間だと……。

 「越乃Shu*Kura」は、車窓のハイライトである「青海川」駅に10時44分から10時50分まで6分間停車する。日本海をバックに列車の外観を撮影するなら、このときしかない。それまで酔っぱらうわけにはいかないのだ。

 というわけで景気づけにビールを注文することに。銘柄を聞いて小躍りした。缶ビールは日本の地ビール第一号として知られる「エチゴビール」のピルスナー、生ビールは新潟の食に合うように醸された新潟限定販売の「風味爽快ニシテ 新潟限定ビイル」だという。なんでもサッポロビールが1876年に「開拓使麦酒醸造所」を設立した当時、ドイツでの修業を終えて主任技師を務めた中川清兵衛は現長岡市(当時は与板町)の出身だったそうだ。個人的には「エチゴビール」の「ビアブロンド」がないのは残念だが、これは贅沢というものだろう。

 酒の歴史に思いを馳せつつ、「青海川」駅到着と同時に向かいのホームへダッシュ。無事にカメラに収めた達成感と共に味わう一杯の旨さといったら、これぞ至福のひとときだ。

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら