(4-3)食品の新たな情報キャッチし現場に取り入れる

認知症予防最前線
看護師・平田祐子氏

 □看護師・平田祐子氏

 ■ちょっと変だと感じたら、早めの受診を

 ◆食事通じコミュニケーション

 現在は、入所者100人の施設に勤務しながら、地域の保健所で認知症の相談に対応したり、認知症の家族会をサポートしています。

 施設には50代から100歳まで、さまざまな年代の人が入所されています。育ってきた環境や認知症になった経緯は違いますが、皆さんにとって毎日の食事は何よりの楽しみです。だからこそ食事を通じたコミュニケーションがスムーズにできるように、また「その人が今、何ができるか」という視点から、食環境をデザインしていきます。例えば同じテーブルに座る人のご飯が気になるときには食形態を見直したり、白いごはんが見えにくい方には、黒い茶碗(ちゃわん)に白いごはんを盛り付けることもあります。

 認知症には、さまざまな症状があります。食べ物を食べ物として認識できず、時には左手でお茶碗を持ち右手でお箸を持つ動作すら忘れてしまう方もいます。そんな症状のある方に中鎖脂肪酸が含まれているソフトゼリーを食べ続けてもらったところ、以前のようにまた食事ができるようになったときには私もうれしくなりました。こうした食品に関する新たな情報もキャッチしながら、現場に取り入れる姿勢も大切だと思います。

 ◆いつでも専門家を頼って

 現役ビジネスマンのみなさんの多くは、親の認知症は心配しても自分の認知症は関係ないと思いがちです。ただ、現場では若年性の認知症患者も増えています。心の健康は、体の健康にもつながります。ちょっと変だと感じたら、早めに受診することをおすすめします。もちろん家族や身近な人が認知症と診断されても、あきらめないでください。家族で懸命に介護をすることも大切ですが、本当に介護が辛くなる前に、日頃から疑問に感じたことがあったら、いつでも専門家である私たちを頼っていただきたいですね。ご家族の気持ち、ご本人の気持ちを尊重しながらサポートしていくのが、私たちの役割だと考えています。

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【プロフィル】平田祐子

 ひらた・ゆうこ 看護師、都筑ハートフルステーション療養管理部長。東京都立広尾看護専門学校卒業後、聖マリアンナ医科大学病院などに勤務。2001年医療法人活人会介護老人保健施設都筑ハートフルステーション療養管理部長となる。認知症ケア上級専門士。

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 □介護ブロガー・工藤広伸氏

 ■認知症である母の元気の源は、毎日の食事

 40歳のとき、子宮頸がんでアルツハイマー型認知症の祖母と、ピック病という認知症の母の介護が始まりました。東京から岩手県の実家まで500キロ。祖母は介護を始めてから1年後に亡くなりましたが、もうすぐ5年目になる母の遠距離介護は今も続いています。

 母は、同じことを何度も言ったり、薬の管理ができない症状はありますが、料理をすることは得意です。昔からレストランの味を家で再現できるほどの腕前だった母は、今も自分で台所に立ち、料理を作っています。凝った料理はできませんが、症状が落ち着いているのは、毎日の料理のおかげかもしれません。

 ブログは週3回更新しているので、認知症に関する情報はいつもチェックしています。ある日、「中鎖脂肪酸が認知症の予防に効果がある」という情報を知り、まず初めにココナッツオイルを試しましたが、湯せんで溶かすのが面倒で結局3カ月で挫折しました。次に試したのが、中鎖脂肪酸が含まれているソフトゼリーです。お薬カレンダーにセットできる小さなサイズ。しかもヨーグルト味なので、母もお菓子感覚で食べることができました。

 食べ続けて3カ月ぐらいした頃、診療所の看護師さんに「久しぶり」と母が言った時には驚きました。母が久しぶりという感覚になることは、以前には見られない状態ですから。現在は母が料理に使う油も、中鎖脂肪酸が含まれているものに変更しました。効果が楽しみです。

 ◆お金と介護者自身の健康

 ビジネスマンの方から「介護のために、今から何を準備すべきか」と、よく質問されます。絶対に必要なものは、お金です。どんな介護になってもいいように、必要なお金を今からしっかりためておくこと。そして、介護者自身の健康です。もちろん私も、母の介護がまだまだ続くからこそ、ジムに通いながら健康な体を目指しています。これからも介護をがんばりすぎず、今日もしれっと、しれっと。

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【プロフィル】工藤広伸

 くどう・ひろのぶ 息子介護作家・ブロガー。認知症の祖母と母のダブル遠距離介護のため、40歳で介護退職。東京と岩手を年間20往復する様子を、介護ブログ「40歳からの遠距離介護」につづる。著書に『認知症介護で倒れないための55の心得』(廣済堂出版)などがある。