介護保険制度改正に向けた“課題” どうなる「軽度」のサービス縮小

 
車いすや歩行車などを、要介護度の軽い人が利用するときの負担割合も見直しの対象になっている(写真と本文は関係ありません)

 平成30年の介護保険改正に向けた課題が出そろった。制度の見直しは3年に1回。消費税の引き上げを見送り、財政が逼迫(ひっぱく)するなかでの改正だけに、厚生労働省の挙げたメニューには、サービス抑制や利用者の負担増につながる案が並ぶ。論点をまとめた。(佐藤好美)

 生活援助は自立支援か

 焦点は、要介護度が軽い「要介護1」や「要介護2」の人が使うサービスの見直し。特に、掃除や洗濯などを行ってもらう「生活援助」が課題だ。全国一律で専門職が担う介護給付から外して自治体の事業に移し、準専門職やボランティアらの協力を得て費用を圧縮する案が浮上する。

 検討する厚労省の社会保障審議会の専門部会では、激しいやりとりが交わされる。

 利用者を代表する委員は、サービスが使いにくくなることに危機感が強い。「認知症高齢者は、要介護認定が軽度に出ることが多い。生活援助を(介護給付から)外すことは後々、重度化や命にかかわることは明らか」

 一方、経済団体連合会など費用を負担する側の委員は、給付抑制を主張する。「掃除、調理、配膳といった日常の生活関連の費用であることを考えると、自己負担割合の引き上げか、自治体事業への移行も考える必要がある」

 生活援助の見直しは10年来の課題。かねて「話し相手にも、見守りにもなる。重度化を予防し、家での生活を継続できる」との意見がある一方で、「家事代行的に利用されている。残された身体機能を使わなくなり、状態悪化につながる」との指摘もあり、自立支援につながるかどうかさえ決着がつかない。

 人材確保できるか

 従来は、財源不足が見直しの動機だったが、今回は「介護人材不足」が加わった。厚労省は4年後に226万人の介護人材が必要と試算。その頃には、約25万人が不足する見通しだ。

 だが、介護職の専門性に応じた仕事の住み分けは進んでいない。部会で厚労省が示した調査研究機関のアンケート結果によると、掃除・洗濯、調理などの「生活援助」を、介護職の中でもスキルの高い「介護福祉士の業務」と考える事業者は少なく、排泄(はいせつ)介助などの「身体介護」や終末期のケアを業務と考える事業所が多い。だが、実際には介護福祉士の6、7割が掃除や洗濯などの業務を、ほぼ毎回行っていた。

 委員の1人は「来年、再来年に天から降ってきたみたいに専門性を持った職員を、現場にたくさん配置できることはあり得ない」と指摘。専門職を、より技能が必要な重度者の身体介護などに集中させていくことが現実的だとする。

 検証も済まぬ間に…

 だが、自治体への移行も容易ではない。厚労省は前回改正で、より軽度の「要支援1」と「要支援2」の訪問介護などを、自治体事業に移したばかり。移行の猶予は29年4月までだが、全国3分の2の自治体はそれにも手がついていない。

 さらなるサービス移行に、委員からは「あまりにも時期尚早。特養の入所が原則要介護3以上になっており、要介護1、2の在宅サービスの必要性は高まっている」との意見が出る。

 移行を急ぐ背景には、深刻な財源不足がある。介護保険の給付総額は28年度に10兆4千億円となり、制度開始時の3倍に迫る。一方で、消費税率10%への引き上げは31年秋まで先送りされ、医療と介護への風当たりは強い。委員からは「制度の持続可能性の観点からは、時間との勝負という要素もある」との声も漏れた。

 ■負担増の案めじろ押し

 【利用者負担】

 他にも、負担増と給付抑制案がめじろ押しだ。利用者負担は制度創設以来1割だったが、昨年8月、一定所得のある人に2割負担が導入された。政府部内には、これをさらに拡大する案もある。

 部会では「すでに重大な影響が出ているのに、さらなる2割負担の話が出ること自体、受け入れにくい」と反発が強い。

 【負担上限の引き上げ】

 月額の利用料が高額になったときに、一定額以上が還付される「高額介護サービス費」も見直しの対象。課税世帯(現役並みを除く)の月額上限は3万7200円だが、一部を医療にある同様の制度「高額療養費」と同額(月4万4400円)に引き上げる案がある。

 所得に応じた負担には一定の理解があるが、「医療と介護をバラバラに見ず、トータルで考えないと、どうにもならない」との意見も出る。医療と介護の両方を利用する人もいれば、複数の利用者を抱える世帯もあるからだ。

 現行制度では、医療と介護の両サービスを利用し、年間利用料が高額な場合、一定額以上を還付する「高額医療・高額介護合算療養費制度」もある。だが、対象が限られており、使い勝手が悪い。

 一時は、医療や介護、保育も含めた利用料を世帯で見て、一定額以上を還付する「総合合算制度」も検討された。消費税10%への引き上げ財源で創設の予定だったが、軽減税率導入の原資に充てられる見通しとなり、立ち消えになったままだ。

 【福祉用具・ケアプラン】

 政府は昨年6月、経済財政運営の指針「骨太方針」を閣議決定。軽度の利用者への福祉用具の貸与について、負担の見直しを明記した。これを受け、車いすや介護ベッドの利用、トイレに手すりをつけるなど住宅改修の負担割合の引き上げも検討される。

 このほか、介護サービスの内容や頻度を記した「ケアプラン」に、1、2割の利用者負担を新たに導入する案も挙がっている。