「男性社員が元気になるから事務職に…」 営業志望の女性が直面した信じがたい面接

 

 平成29年卒業予定の大学生を対象とした企業の内定式が、10月に入って相次いで実施された。今年の就職活動は人手不足で企業の採用意欲が強く、売り手市場との見方が一般的。事実、就職情報のマイナビが大学生・大学院生を対象に就活を表す漢字1字を尋ねたところ、「楽」が1位だった。しかし、文系に限って言えば男女ともに「苦」が1位。私の娘も決して楽ではない就職活動を行った。

 娘は某大学の経済学部4回生。ゼミの卒業生は金融機関や公務員など硬い職業が多い。しかし、そういった分野にはあまり興味を示さずにさまざまな業種を研究し、会社説明会に足を運んだ。マスコミにはまったく関心がなかったようだ。

 活動を開始して早々に、本音と建前の世界に直面した。それは誰もが知っている企業の説明会に行ったとき。著名大学か強力なコネのある人間しか採用しないと思っていたが、事前説明では「門戸は広く開放している」。それを真に受けて足を運んだ。

 現場でも「当社は大学名を問いません。本日から選考活動です」と強調していたが、終了後に「Aさーん、Bさーん、Cさーん。ちょっと来てください」と3人が別室に呼ばれた。「できレースか」と参加者は皆ずっこけたらしいが、さすがちょくちょく不祥事が発覚する会社。採用活動も不透明感が漂う。

 特定の大学を対象にしたOB・OGの説明会でもがっくりさせられたことがあった。就職人気ランキングの上位にある企業を訪問し「会社の魅力は?」と質問したところ、「給料がそこそこよく、休暇もきちんと取得できる」との回答。もっと前向きな答えを期待していただけに、その企業に対する関心が急に薄れたという。会場の雰囲気もしらけてしまい、同席した人事担当者も苦笑いをするしかなかったそうだ。 別の説明会では「ノルマがきついし一言で表現するとブラック企業。絶対にお薦めしません」と力説されたとか。 企業側も単に「その大学のOBだから」という理由で説明会に派遣するのではなく、「ふさわしい人物かどうか」をきちんと見極めた上で送り込むことが必要だろう。

 また、インターンシップへの参加を重視する動きが強まっているといわれるが、とくに金融や建設・不動産、通信といったインフラにかかわる企業に就職したい場合は、インターンが重要なカギを握るということを実感した。

 4月には某企業から内々定通知が届いた。圧倒的な知名度を誇り新卒の採用にも意欲的。インターンにも参加していたので、てっきりそこに行くと思っていたら就職活動は続けていくとのことだった。そして6月に某メーカーから内々定を頂き、お世話になることを決めた。

 最初に内々定を取得した企業は、特定されやすいので業種も明らかにできないが、インターネットへの社員による書き込みが半端な量ではないことに不安を覚えたという。一方、内定した某メーカーについては面接でのやり取りが決め手となった。面接にかかわったすべての社員が、素直に話すことができる雰囲気を作ってくれて、社員・社風に対する好感を抱いたのだ。

 その企業には取材で付き合いがあるせいか、就活時期に考えられない偶然が重なった。本社での副社長取材と会社説明会は同じ日時に行われ、IR説明会と集団面接も同じ日時だったのだ。その時は会社の近くで遭遇し一緒に本社ビルに入った。今思えば運命の糸によって導かれたのだろう。ありがたい話だ。

 信じがたい面接もあった。これは娘の友人の話。彼女は営業職を強く希望していたが、その美貌に魅せられたのか、ある企業の面接では「君は場を明るくする雰囲気を持ち合わせている。男性社員が営業から戻ってくれば、君の姿を見て元気を取り戻せるはず。だから事務職に就いてほしい」と説かれた。彼女は気も強くて「営業を熱望しているのを分かっているのに、なんでそんなことを言うのですか」と猛反論。面接会場はざわついたという。その企業はダイバーシティの重要性を唱えている大手メーカー。企業の本音と建前の世界を見事に表した事例だ。

 一方で、まだ内定を得ていない学生も少なくない。娘の中学時代の友人は最終手段として就活サポートセンターを活用しているが、魅力に乏しい仕事の企業ばかり。「戦略をきちんと練って就活戦線に臨めばよかった」というのが率直な思いだ。 どんなに企業の採用意欲が高まっても、一部の学生を除いては「楽」な就職活動はない。そう肝に銘じて活動を進めることが重要だろう。(伊藤俊祐)