部下の出産・子育て・介護どうすれば… 悩める管理職「イクボス」の人材育成
仕事と生活の調和(ワークライフバランス、WLB)実現を主導し部下を育成する-。そんな管理職「イクボス」を育てていこうという「イクボス企業同盟」の加盟社が100社を超え、増え続けている。背景には、結婚・出産を機に働き方が変わる女性のほか、家族の介護などで制約を抱える社員が増えていることがある。しかし、当の管理職たちはまだ手探り状態のようだ。(石川有紀)
汗をかく管理職
「業務や勤務形態の違いでWLBへの認識度合いが違う」
「女性社員の家庭と仕事への配慮が難しく、指導しにくい」
企業同盟が10月に大阪市内で開いた研修会。金融機関やメーカーなど17社の管理職計約60人から出てきた声は、悩みと戸惑いに満ちていた。
しかし、求められているのは、多様な働き方や価値観を尊重しながら、社員それぞれが仕事できっちりと成果を出せる職場づくりのアイデアだ。12月の研修会では、一歩前進して参加者による2カ月間の取り組みが発表された。
部下との一対一での対話やランチミーティングを通じ相互理解を深めた結果「部下の意欲が向上した」という企業もあった。一方で「午後5時に部署の対話会を企画したので、4時に仕事を終えてケーキを買いに走った」とか「世代間ギャップを超えた一体感醸成のため、ピンクレディーを踊った」など迷走気味の「イクボス」もいた。
背景に多様な働き方
イクボス企業同盟は平成26年、日本生命保険やみずほフィナンシャルグループ、全日本空輸、コクヨなど11社で発足。今年12月時点で、大企業を中心に118社まで増えた。各社がWLB実現に向け、まず取り組みを進めるのが長時間労働の削減だ。
「イクボス」を提唱するNPO法人ファザーリング・ジャパンが12月に同企業同盟の加盟社を対象に行ったアンケートでは、長時間労働削減策で効果が高かった施策(複数回答)の1位は「ノー残業デー設定」(27社)で、次いで「長時間労働をしている部署に是正を求める」(21社)、「経営層からのメッセージ」(18社)だった。
研修会に参加した企業でも、職場レベルでは、退社時間をボードに示したり、アフター5の交流会を企画したり、といった取り組みが進んでいる。加えて経営層のメッセージが働き方改革に与える影響も大きいようだ。
カギはトップの言葉
12月の研修会では経営層から初めて、日本生命保険の岡本圀衞会長とパナソニックの長榮周作会長らがパネルディスカッションに登壇した。
「昔は家庭を顧みず働いて給与も上がった。多様な部下を率いる今の皆さんの方が、はるかに大変だ」
管理職をこんな風にねぎらって笑いを起こした岡本氏だが、「人口減少する日本がGDP600兆円を達成するには、女性が産み育てやすい社会にして出生率を上げないといけない」とWLBの必要性を力説。男性職員の育児休業取得率100%を達成した自社の取り組みに触れ、「トップが本気で継続しないといけない」と訴えた。
長榮氏は松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助の言葉「衆知経営」を紹介し「全員が知恵を出し合うことが大事。上司と部下が話し合うことで、よりよい仕事の進め方や、やらなくて良い仕事の効率化もできる」と指摘した。
WLB実現へ向け政府が乗り出す「働き方改革」を実効性のあるものとするには「一人ひとりが生き方を変えることが必要」(ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事)。難しい取り組みだけに、職場で改革の最前線に立つイクボスたちの模索は続きそうだ。
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