変わる春闘 トランプ氏の「強権的言動」が左右 懸念と期待が交錯
「競争が激しく、単価は下げられている。人手不足だが、賃上げもできない。大幅な賃上げと大手はいうが、中小企業には関係のないことだ」。東京都江戸川区の運送会社の経営者は、賃上げができる環境どころか、ドライバーの引き抜きも相次ぎ、事業継続の不安をもらす。
◆政労使連携ムード
2017年春闘は、賃上げの流れがストップすれば、再びデフレに戻ってしまう「分水嶺」の経済環境の中で進められる。それだけに、中小企業を含め、賃上げが進み、消費回復につながることが欠かせない春闘になっている。
安倍晋三首相が経済界に賃上げを求める「官製春闘」4年目。連合は従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)で「2%程度」を方針に掲げた。経団連も「年収ベースでの賃金引き上げ」を呼び掛け、安倍首相の強い要請もあり、「ベアは賃上げの手法の柱の一つ」と位置付けるなど、踏み込んだ対応をみせた。さらに、労使ともに大手企業に対し、取引価格の適正化を求め、系列、下請けなどの中小企業の賃上げを支援する。
「デフレ脱却目前という中で、かつてないほどに政労使が連携して、賃上げを進めようとしている」と、日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは今年の春闘前哨戦を評価する。
しかし、この異例の賃上げムードに、水を差すのがトランプ米大統領の政策やさまざまな言動だ。
◆懸念と期待が交錯
経団連の榊原定征会長は、トランプ氏の大規模インフラ投資などの米国経済へのプラス面も評価しながら、「懸念と期待が交錯する」との景気認識を示す。日本商工会議所の三村明夫会頭は「足元の不確実性は経営者の心理に悪影響」と分析。連合の神津里季生会長は「連日の大統領令などで経済の不安材料が高まり、予断を許さない」とし、労使ともに保護主義や、ドル高是正に向けた強権的な言動に警戒感を強めており、交渉への影響は確実視されている。
また、日米の通商問題で、春闘の牽引(けんいん)役でもある自動車産業に焦点が当たっていることも、大きな懸念材料だ。
既に連合では、神津会長が「トランプ氏関連で業績や先行きに悪影響が出た場合、一時金の減額はしようがない。だが、一方で中期的な展望を確保するためにも月例賃金の引き上げにこだわる交渉を続ける」と、戦術的な対応策を示す。トランプ大統領が、今後の労使交渉を左右する春闘が本格化していく。(平尾孝)
関連記事