『石榴を食らえ』関野裕之・著 著者の心中を吐き出した歌集

書評

 《短歌は不幸せ者の文芸である。なにかしら心に抱えたものを吐き出さなければいられない者が短歌を詠う》と書く著者の第1歌集。1957(昭和32)年の生まれ。15年前に防人の歌に衝撃を受けて詠み始めた。河野裕子さんが選者を務めた「塔」の会員だ。

 《七年前去りゆく母を暗がりに見送りし吾子この春六年》。小さな子供を抱えて離婚した人物らしい。こんな歌も。《再婚を勧める人の口元に黒子が冬の光と遊ぶ》

 《幾つかの夢は柘榴になりはてて飲み下せない種を吐き出す》

 人生の中で吐き出さざるを得なかったもろもろが胸に迫る。(2700円、青磁社)